私を癒したのは天使でした




「[#dc=1#]?」
「ご、ごめん!何でもない!」



危うくジュード君に八つ当たりまでしそうになった。きっと情緒不安定なんだ。宿に帰って寝ようと立ち上がって走りだそうとしたけど、ジュード君に手首を掴まれて阻まれた。



「座って」



見上げられた表情は真剣で、発せられた声はいつもより少し低め。逆らうことは出来なくてもう一度ベンチへと腰を下ろす。



「何か不安なことがあるなら言って。僕でよければ聞くから」



ジュード君はさっきとは打って変わって柔らかい笑みを浮かべて両手で私の右手を包み込む。その手はすごく温かくて何かじんわりして泣きそうになる。



「……わた、し……」



違う。役に立たないとか別に今に始まった事じゃないから仕方ない。少しずつみんなに習って細身の剣を使えるようになってきた。まだ弱いけど。それ以上に、私はここにいていいのだろうかと疑問に思ってしまう。それは日に日に増すばかり。



「私、は……」



みんなは何で何も言わないんだろう。私は全部話したのに。それなのに、みんな私を受け入れる。いや、最初にエルには変な人呼ばわりされたけど。



「……ジュード君」
「なに?」



聞くのは怖い。でも聞かなくちゃいけない。じゃないと私はいつまでもこのままで、いずれみんなに酷いことをしてしまうかもしれない。



「わ、私のこと、気持ち悪く……ない?」



覚悟を決めて聞いてみる。心臓が爆発するんじゃないかってくらいバクバクいってる。



「たまに言動がおかしいけど、気持ち悪くなんかないよ?」



首を傾げるジュード君が可愛いとうっかり思ってしまう私は馬鹿だ。そしてやっぱり私の言動っておかしいんだ。うん、知ってる。けど気持ち悪くないという。そうか、言葉が足りないんだ。



「だって!私、全部知ってるんだよ!?この先何が起こるかって!ジュード君たちに何が起こるかって!」



この世界の出来事がゲームの中だって事は言ってない。物語になってるとは話したけど。そして、この物語のラストまで私は知っていると今いるメンバーが揃ったときに話した。



「……普通、気持ち悪いよ」



そんな事が有り得るのかとか、知ってるくせに話さないとか。そもそも別の世界の人間が存在するなんてとか、思うはずなのに。


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