私を癒したのは天使でした





君は本当に純真で私は天使なんだよ?







「はぁ~」



長々と出るのは溜息というやつ。吐きたくて吐いてるわけじゃない。ちょっとしんどい。それが正直な感想。宿に戻るでもなければレイアやエリーゼたちについて行って買い物をするわけでもない。ルドガーは確かアルヴィンとローエンにクエストを手伝ってもらうって街を出て行ったっけ?タフだなぁ。



「ジュード君は……」
「僕がどうかした?」



彼だけは一人で、と思い出していると目の前から声。へっ?と前を向くとそこにはジュード君が立っていた。手には封筒のような物を持って。



「[#dc=1#]、僕がどうかしたの?」
「えっと……声に出てた?」



一人で考えながらのつもりだったけど言葉に出していたらしくジュード君は頷いた。なんてこったと自己嫌悪。別に聞かれちゃいけない事じゃないけど。



「今、みんなが何してるんだっけって思い出してただけ」



ジュード君はタイミングよく現れたんだよ。と返す。私は変なことを言ったのか、ジュード君は眉を寄せて私を見る。イケメンに見つめられるのはかなり照れるんだけど。




「隣、いい?」
「あ、うん。どうぞ、どうぞ」



私の座るベンチを指さすジュード君に半分席を譲る。



「そう言えば、ジュード君はヘリオボーグに行ってたんじゃないの?」
「うん、行ってきたよ」



この資料を取りにね。と手に持っていた封筒を見せる。時間があるときに源霊匣の研究を進めようかと思って、と微笑む。



「ジュード君は凄いね」



医学者として源霊匣の研究をしたら大変な状況に陥ったルドガーの手伝いをしたりと色んな事をやってる。私はそれらの事を『全部知ってる』のに何も出来ない。そう、この先に何が起こるのか全部知ってるのに、何も出来ないでいる。



「私ももっとみんなの役に立てたらいいのに」



ゲームの世界にトリップしてしまった私。すでにクリアー済みでイベントだって全部こなしてきた。だからこそわかる。何の能力の持たない私は何にも出来ないのだと。さっきの溜息はその悔しさともどかしさから。



「なんも、できないね」



自嘲気味に笑う。ネガティブになってる場合でもジュード君に愚痴をこぼしてる場合でもないのに。でも、毎日考えてしまう。


1/5ページ
スキ