世界が終わるまでは
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「……どう、して?」
解放された唇。私は困惑したまま彼を見る。何故彼がこんな行動に出たのかわからなかった。それと同時に何故私は彼を突き飛ばさなかったのかと後悔もした。想うだけで終わらせるはずだったのにと。
「好きな女を守りたいって思って何が悪いんだ!」
真っ直ぐと私を捕らえる瞳は全く揺るがない。目を反らすことが出来ない。ルドガーの言葉が何度も頭の中で繰り返される。好き、と言った。
「なまえは兄さんが一番なのはわかってる。でも……好きなんだ」
何て事だ。私が死ぬまで秘め続けると決めたことを彼は口にした。出会ってから段々と惹かれていくのはわかっていた。でも私は長くは生きられないとわかっていたから、想うだけでいいと。きっとルドガーはもうすぐ知る。隠された真実を。
「渡したくないんだ」
そしてもう一度、唇を塞がれる。頭では駄目だとわかっているのに体と理性は言うことを聞かない。深くなるそれを抵抗することが出来なかった。それでも……
「……満足した?」
私とキス出来たことに。これ以上、私の中へ進入させるわけにはいかない。室長の願いが、今までが無駄になってしまう。今度こそ、彼から距離を取り感情のない表情を向ける。
「私はルドガーをそんな風に思ってない」
「なら何で拒まなかった!?」
一度目は確かに驚いた。それでも本当に嫌いな相手なら瞬時に突き飛ばしただろう。でも、出来なかった。それを言いたいのだろう。
「それでルドガーが満足するなら別に。君ならもっといい相手が見つかるよ」
スッと立ち上がって部屋を出ようとする。ルドガーが手を伸ばして止めようとするけど、私はかわしてドアノブに手をかける。
「……じゃあね」
ルドガーの顔を見ず、私は扉を閉めた。彼が追いかけてくる気配がないのを確認してマンションを出る。報告書を書かなきゃ、そんな事を考えながら自分の執務室に向かえば夜遅いからか誰もいなかった。
「……ごめん、ごめん……ごめんなさい……」
謝罪の言葉と共に流れる涙。彼が私に想いを伝えなければ、私が彼を好きにならなければどんなに幸せだったのだろう。エージェントになったときから決まっていた私の運命。
「……私も、好き」
誰に言うでもない呟きは静寂にかき消された。
世界が終わるまでは
((あなたを好きでいさせてください))