世界が終わるまでは
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「……結局、兄さんなのかよ」
苦痛の表情のルドガーが呟くように言う。何がそんなに辛いのかはわからない。ルドガーは室長が、室長はルドガーが好きで大事で互いに守りたいと思ってるだろう。そんな室長が隠していることにイライラしているのか。
「なまえは、兄さんの言うことなら何でも聞くのか?」
「たぶん、ね。私にとって室長はまだ室長だし、命の恩人でもある。その恩人の願いなら、聞くよ」
それが私の死であっても。どのみち私もそう長くは生きられないだろう。ルドガーは知らない。骸殻の、クルスニク一族の呪いを。失うとわかっているなら、せめて恩人の為に使いたい。それは私の意志で。けど、ルドガーの側にいるとその決心が鈍ることがある。それが意味するものを私は気付かない振りをしている。
「室長がいなかったら、私は今ここに存在してない」
肩を掴む力が強くなる。わからない。今、ルドガーが何を思ってるのか。何が辛いのか。何に怒っているのか。
「俺はなまえも守りたい」
真っ直ぐに向けられた瞳はしっかりと意志のこもったものだった。だから怖い。私を守るのはある意味不可能。彼が、そこにこだわり傷つき倒れるかもしれないと思うと恐怖になる。
「……ルドガーに守ってもらうほど私は弱くないよ」
これでもルドガーより七年も長くエージェントをやってるんだから。誤魔化すように微笑む。が、ルドガーの表情は変わらない。なら、いっそ突き放した方がいいのかもしれない。
「自惚れないで。室長の弟で能力も他のエージェントよりも長けてるかもしれない。でも、私だってクラン社を代表するエージェント。あなたに守ってもらうほど落ちぶれていない」
目の前のルドガーを睨みつける。彼の教育係になってからこんな風に厳しいことを言ったことはない。まだ新米でたった一日で一生分の不幸を背負ってしまった彼に気を遣っていたから。
「室長には室長の考えがあるの。あなたはそれを邪魔をする権利はない。たとえ室長のおと……っ!?」
私に聞いても無駄だと知らしめようと、一気にまくし立てた時だった。視界が一瞬にして暗くなり口が何かで塞がれたのは。思考が、それが誰の仕業か理解できたのはそれから数秒要した。そして思わず目を閉じてしまったことに、受け入れてしまったことを後悔するまでもう数秒。