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「詳しいんですね」
購入した物の紙袋を抱え直すとほぼ同時に問いかけられた。んー?と振り返ると、何かを探るような目。
「グレルサイドは……生まれ育った街だからね」
「えっ?」
次は食材だ。お店はあっち、と歩き出しながら、とりあえず質問に答える。わたしの答えに驚いたのかヒューバートは声を上げる。
「でも……」
言いたいことはわかる。生まれ育った街なわりに街を歩いていても誰一人声を掛けてこないしわたしも声を掛けない。
「知ってる人なんていないよ。わたし、孤児だし、ちゃんと家があるわけじゃなかったし」
教会で寝泊まりはさせてもらってた。生活は自分で。街では働けないから街の外で命がけで魔物を倒してその日の生活費を稼いで。
「ですが、なまえは兄さんと同じ騎士学校にいたのですよね?」
「うん」
いつまでも魔物と戦って生活を成り立たせられる訳じゃない。死ぬのかなって思ったとき、たまたま通りかかった騎士に助けてもらった。すごく格好良くて、憧れてわたしもああなりたいと思った。
「だから一生懸命お金を貯めてバロニアに行ったんだ」
けして楽ではなかった。でも騎士になりたかった。わたしを助けてくれた騎士のようになりたくて。
「あ、あそこが食材屋だよ」
「え、ええ」
なんでこんな話しちゃったんだろう。人に聞いたらあまりいい話じゃないのに。うーん、どうしてだろう。
「持ちますよ」
「あっ」
抱えていた荷物をヒューバートとが奪う。わたしが両手で持っていた荷物をヒューバートは片手で抱える。
「このメモの食材をお願いします」
「う、うん」
手渡されたメモにはいくつかの食材が書かれていた。ヒューバートは空いてる方の手でかごを持つ。ここに入れてくださいって。なんか、気を遣われてるのかな。それとも可哀想な子だと思われたのかな。
「なまえ?」
玉子を手に取ったまま、動かないわたし。なんか、悲しい。
「なまえ?」
「ご、ごめんなさい!」
ぼーっとしてしまった。彼に声を掛けられて慌てて食材をかごに入れる。また怒られちゃう。しっかり者で優秀なヒューバートはわたしみたいなのは好きじゃないんだし。