だからそこで笑っていて
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「なまえ?」
休みなくクエストをこなし、少し休憩しようとルドガーが飲み物を買いに行っていると、別れた場所になまえの姿はない。広い港を見回しながら歩くと、港の端の方から何か聞こえた。
「―――~♪」
その声の方へと足を向けると、海の目の前に置かれたベンチになまえが座っていた。普段とは全く表情で、いつもの元気さが嘘のような静かな声で歌うその姿にルドガーは思わず立ち止まり、目を見張った。寝てるとき以外は元気よく叫んでいるなまえが、今にも泣きそうなくらい表情が重く見えた。
「……海の向こうが、地球だったらすごいのになぁ」
歌を止め、海を見つめたまま口にされた言葉。それはなまえがいたという世界。ルドガーが負債を追ったあの日に、あの列車で出会った少女。出会ったときの第一声は、乗っていた電車じゃぬぇ!?だったのを昨日のことのように覚えている。
「みんな、元気かなぁ。っても心配する親はいないけど」
自嘲気味に笑みを浮かべて足下にある小石を蹴る。ぽちゃんと音を立てて海へと落ち、水面には波紋が広がる。それが合図になったようにルドガーはハッと意識を戻す。
「なまえ」
「あ、ルドガーおかえりー!寂しかったよー!」
声を掛ければいつも通りの彼女。いつもなら苦笑したくなるのだが、出会ってから初めて見るなまえに戸惑いは隠せず、ほらと手に持っていた飲み物を手渡すしかできなかった。
「今日はマクスバードでお泊まりかな?きゃっ!お泊まりだって、恥ずかしい!」
わざとらしい照れる仕草も今日は何故か痛々しく見えた。きっとあの彼女は自分しか知らない。そうも思うとルドガーは何故かドキッとした。何かいけないことをしてしまったかのように、動悸が激しくなる。
「ルドガー?どうし……」
「元の世界に戻りたいのか?」
全く反応のないルドガーに首を傾げるなまえ。が、そのルドガーの言葉に息を呑んだ。虚を突かれ黙ったなまえに、ルドガーは眉を顰める。すでに表情は泣く寸前だったから。