空から君へ
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「……久しぶりだね」
ここしばらく滞在させてもらっている宿の部屋の扉を開けるとそこには、以前の自信に満ちた面もちはなく、まるで生気を失ったような憔悴しきったアルヴィンが立っていた。控えめなノックにどうぞと返事しても入ってこないから開けてみればその姿。
「とりあえず、入りなよ」
最後にその姿を見たのはジルニトラ。マナは持たないが音素(フォニム)を持つ私に興味を示したジランドに捕まっていた私。何とか抜け出して逃げ出したところに彼らと遭遇した。
「紅茶しかなくて悪いね」
素直に部屋に入ったものの返事一つない。アルヴィンが私の顔を見たとき少し泣きそうな顔をした。
「……本当に……生きてたんだな……」
やっと口にした言葉はそれだった。それもそうか。ジルニトラの最奥でジランドとセルシウスを倒した後、ミラと共にクルクニスの槍を発動させたて、私は海へと投げ出された。そしてこのル・ロンドの港に流れ着き、ジュードの両親に助けられて今に至る。
「この街の者やマティス夫妻には感謝してるよ」
しかし自分でもよく生きていたと思う。アルヴィンやジュードたちには防御譜陣を施したけど、私自身は何もしていない。ル・ロンドに生きて流れ着くこと自体が奇跡に近い。
「皆無事か?」
この問には答えない。代わりに肩を大きく震わせた。ベッドに腰掛ける彼の前へと行くと、歪んだ表情と目が合い……腰に抱きつかれる。子供が母親に抱きつくように。
「……ジュードを、殺そうとして……レイヤをを撃った……」
掠れそうな声でそう言った。聞けば、ミュゼがジュードを殺したら故郷に帰してくれると約束してくれたと。だからジュードを殺そうとしたけどレイヤに邪魔をされて、思わず打ってしまったと。
「撃つつもりなんかなかったんだ!」
抱く力を強め叫ぶ。その後、ジュードと戦ってぼっこぼこにされたと。どうしていいかわからず、何を思ってか、ル・ロンドに行かなければならないと思ったと。
「俺は……俺は……」
肩をぶるぶると震わせる。ジュードは殺すつもりだったのにレイヤはそうじゃなかった。打ってしまって怖くなったと言うところか。