君と一緒に歩くこのひと時
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「おっ、紫鶴。これお前に似合うんじゃねぇか?」
ピオニーが一件の露店で立ち止まり、紫鶴を手招きする。
「お客さん、お目が高いね。そちらの彼女にどうだい?」
「わ、私は別に…彼女じゃ…」
何事かと近づくと店員がにこにこと笑顔でそう言った。ピオニーに付き合って街に繰り出すのは初めではないが、声を掛けられて『彼女』扱いをされたのは初めてで思わず言葉を詰まらせてしまう。
「(意識するところじゃないよね)」
紫鶴とピオニーなら精々、兄妹。ピオニーのお忍びの遊びに付き合っているから、紫鶴の服は軍服から私服に着替えている。ただ髪は普段通り三つ編みに結っており化粧もしていないからいつも以上に幼く見えているはず。
「うーん、紫鶴」
「なに?」
溜息を吐きつつピオニーの横に立てば、彼は躊躇いなく紫鶴の髪を結っていたゴムを解く。ぱさっと音を立て紫鶴の結われた髪の毛が解けて広がる。
「ちょっ!なに……」
いきなり何をするのだとピオニーの方へと顔を上げれば、彼は紫鶴の耳元に手を伸ばした。
「……似合ってるぞ」
何かを差し込まれた。そっとその部分に手で触れれば何か堅いもの。
「これって……簪?」
「おう」
差し込まれた簪を髪から外す。銀色の簪に蝶をあしらった飾りと青と紫のビーズが施されていた。
「オヤジ、これくれ」
「毎度!いい買い物したねぇ」
「まっ!ピオ……じゃなくて…」
数十ガルドを店の店員に渡すピオニー。購入するとは思わなかった紫鶴が慌てて名を呼んで止めようとしたが、ここは街中。城の中ではない……迂闊に名前を呼べるはずもない。名を呼べば皇帝がふらふらと遊び歩いていると言い触らしているようなものだ。