00 始まりの兆し
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初めは人差し指と中指で軽く触れて一度離し、今度は4本の指でそっと撫でる。最後に意を決して刀の鞘に手を掛ける。左手で鞘を持ち、右手で柄に手を掛けて一気に引き抜く。
銀色に輝くその刀は五百年近くも前の物とは思えないほど美しかった。紫鶴はその美しい刀身に見惚れていた。
「それを生かすも殺すもお前の自由…まぁ、今日一日持ち帰ってゆっくりと考えなさい」
「…でも」
手の中の葛の葉は初めて持ったとは思えないほど手に馴染んでいる。ただ刀を手にすると思い出されるのは辛く苦い思い出…。
「わかった…とりあえず、今日は預かるよ」
刀身を鞘に収め自身の脇に置く。祖父は黙って頷いた。
紫鶴は胴着から学校の制服に着替え祖父の家を後にした。祖父の家から紫鶴が中学のときから暮らしているアパートは徒歩で15分程度。胴着は祖父の家に置いていき、左肩に学校指定のバッグと、木刀と葛の葉を入れた刀袋を掛けている。
「まさかこんな方法で継承なんて…なんかお祖父ちゃんにしてやられた感じ…」
少々納得はいかないがこの葛の葉を祖父に叩き返そうとは思わなかった。むしろ持っていなくてはいけないような気がしてならない。
「葛の葉―己の芯の強さを振りかざすが為に、か」
ぽつり、と幼い頃から祖父に両親に教えられた言葉を呟く。芯の強さ…まだその意味が分からない。この刀は持っていないといけない気がするが、持っていていいものか考えてしまう。