23 過去に囚われた者へ
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「私は私が憎くて嫌い」
大嫌いって大きな声で言いたい。でも、そんな私なんかを大切だと言ってくれる人がいる。自業自得の怪我にも心配してくれる人がいる。好きって言ってくれる人がいる。なんて贅沢者なんだろう。ついこの前までは私が憎くて殺したいって言ってた紫季までもが助けくれた。果報者なんて言葉では片付けられない。
「それでも俺は紫鶴が好きだぞ」
「僕だって君が大切なんだ」
「考えるだけ無駄ですよ」
本当に考えるだけ無駄なんだよね。本気で嫌わせてくれないんだもん。ここに来てからの二年、もう三年か。ずっと幸せだった。辛いことがなかったわけじゃないけど、楽しくて充実してた。
「悩んでたのがバカみたい」
わざとらしい溜息を吐いて首を振れば、バカだよお前は、とあっさり言われた。はいはい、そうでしょうよ。嫌われるのが怖かったのかも。もう、何かを失うのが嫌だったんだ。
「これでルークたちにも話せますね?」
「そだね」
どうやって話そうか考えてた。心の中でピオニーやアスランならきっと笑って許してくれるって思ってたんだ。でもルークたちはわからない。手のひらを返したように、目の色も変えると思って……信用してなかったんだ。
「では迎えにいきますか?」
「行くのはお前一人だ」
「僕たちは紫鶴と話したいんです」
そろそろ落ち着いたでしょうからと言うジェイドに頷いて謁見の間を出ようと思った私の左右の肩に手を置いたのはピオニーとアスラン。その顔は満面の笑みで物言わせぬ雰囲気を漂わせていた。
「仕方ありませんねぇ。今日だけですよ」
ポケットに手を入れてスタスタと謁見の間を後にするジェイド。彼が戻るまでの間、ピオニーとアスランの板挟みのになるのも久々で、面倒なんだけど何故か安心した。この間は平和なんだ。