21 手を伸ばせばそこに
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「アンタのことは憎いのに……」
「アッシュから、伝言聞いてる」
話がしたい。ちゃんと、事実を。麻生おじさんたちはきっとこうなった経緯のことなんて話していないはず。何も知らずに養子に出された紫季が私を憎むのは仕方ないけど、私にとっては大切な弟。出来れば争いたくはない。
「ゆっくりはしてられないんだろ」
「えっ?あ、うん」
寄りかかった壁から離れ今度はイオンの方へと歩き出す。アニスがイオンを庇うように前に立つけど彼は大丈夫ですとアニスの肩に手を置いて一歩前へ出る。
「出るなら早い方がいい。モースはともかくヴァンたちはアンタを連れ回す気だ」
「六神将が許可を取ろうとしていましたね」
紫季の口から意外な言葉……出るなら早い方がいいって。イオンは特に驚く様子もなくそれに言葉を返す。
「セフィロトツリーを消すために、ダアト式封咒を解かせようとしているんだわ……」
「……ってことは、いつまでもここにいたら、総長たちがイオン様を連れ去りにくるってこと?」
「モースはリグレットが連れ出したからな」
モースがいなければ導師を連れ去るのは容易だと紫季が続けるとガイがささっと逃げちまおうぜ。待ちの外に出て、後のことは逃げ切ってから決めればいいと提案する。それにみんな頷く。
「紫季は?」
「俺はまだやることがあるからな」
おまえたちはさっさと行けと言う。私たちを逃がしたことがバレたらと心配でそれを言おうとすればそんなヘマしないと先に言われた。
「紫季……紫季がなんて思おうと私はずっと大切に思ってるからね」
敵意も殺意も感じないからなのか、離れるのが嫌だったからかわからないけどギュッと紫季を抱きしめて離れる。今度はゆっくり話をしようね、と笑って言えば短く、ああ。と返してくれた。この部屋に紫季だけを置いて私たちは急いで来た道を戻る。上手い具合に敵と遭遇しなかったのは紫季が何かしてくれたのか。今は、ここから出ることを考えなくちゃ。