00 始まりの兆し
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紫鶴の切り替えの早さに祖父もさすがに呆れたが、そのまま黙って立ち上がり道場の端にある神棚の前に行く。神棚の下には一本の刀が飾られており、祖父は刀を手にして再び紫鶴の前に座る。
「お祖父ちゃん?」
その刀は確か、この葛城家に代々伝わる一振りだった。刀の名は『葛の葉』。己の芯の強さを振りかざすが為に…紫鶴は幼い頃よりこの刀の意味を教えられてきた。
「この『葛の葉』…今日より紫鶴、お前が継ぐのだ」
「はぁっ!?だってこれって、当主が継ぐものでしょ?まだお祖父ちゃんが…」
祖父の突然の言葉に紫鶴は驚きと戸惑いの声を上げた。思わず立ち上がってしまうほど。
「いや、実はな…お前に先程やらせた剣舞が伝承の継承の証なのだ。継承後継の者が継承者と弟子の立会いの元で完璧に舞うこと…これが葛城紫幻流の継承なのだ」
目を見開き驚いたままの紫鶴に祖父は冷静に告げる。その驚愕の事実にただ祖父を見つめていることしか出来なかった。
「そんなの……聞いたことない…」
必死に声を絞り出す紫鶴。立ち尽くす紫鶴に祖父は座りなさいと促す。ゆっくりとへたり込むように座る。
「これは後継者にのみ口伝されるもの。知らなくて当然じゃ」
すーぅと刀を紫鶴の方に差し出す。
「これよりこれはお前のものじゃ」
「でも…私は」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる紫鶴。視線は刀に注がれている。
「だから、じゃ」
紫鶴は導かれるかのように刀―葛の葉に触れる。