20 変わりし君に触れる
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「アッシュ」
タルタロスでダアトに向かう最中、船は自動運転にしてあるからやることはなく、ちょうどいい機会だと甲板にいたアッシュに声を掛ける。彼は無言でこちらを見た後、すぐに海へと視線を戻した。
「……あの子……紫季はアッシュと仲いいの?」
「……ずっと行動は共にしていた。俺とあいつは似たもの同士だからな」
海を見据えたまま私の質問に答える。けど似たもの同士の意味が分からず、えっ?と声を上げればゆっくりと体を私の方へと向ける。
「俺もあいつも、居場所を奪われた。そしてその奪った奴を心の底から憎んでいる」
緑の双眸は憎しみの炎が宿ったように深くそして鋭かった。返す言葉も見つからない。どんな理由であれ私もルークも二人から元々あった場所を奪い過ごしてきた。私にとっても辛い過去だけど笑って過ごせる日が一日でもあったなら、十分幸せだから。紫季が私を殺したいという気持ちは今も変わらないだろうと思うとちょっと悲しい。
「……そっか。私の記憶は幼い、可愛い弟の笑顔で止まってるから」
どれだけの憎しみなのかわからない。顔を見るなり斬り掛かりに来るならそれなりなのだろう。
「紫季には申し訳ないけど私は死ねないや……守りたい人たちがいるから」
その人たちに守られている現状なのに。でも守りたい。命を懸けてでも。私が私でいられたのは全て彼らのおかげだから。
「……生きるのも殺すのも、それはそいつの勝手だ」
謝る必要はねえよ。ぶっきらぼうだけどでもはっきりとアッシュはそう言った。その言葉がなぜか心に染みて軽くなった気がした。でもそれは微々たるもので私の闇には小さな灯りが点いた程度。真っ暗だったよりはマシでアッシュからの言葉だからこそ灯りは点いたのかな。
「そうだね」
生きるのも死ぬのも選ぶのは自分。己に与えられた生を全うするまで生きるのが性と言うもの。欲なんだ。