16 堕ち掛けた幸福
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「…かはっ!」
紫季の目の前で紫鶴が崩れ落ち倒れる。その様子をジェイドは淡々とした表情で見下ろす。何が起こったのか分からず目を見張る。この男は何をした?同じマルクト軍の部下であり妹のような存在の紫鶴に刃を向けて刺した。躊躇することなく。
「殺してませんよ」
その言葉に倒れた紫鶴に向けていた顔をジェイドの方へ向ける紫季。ジェイドは眼鏡のブリッジに手を置いて顔を隠すようにしていたため今の表情は窺えない。
「だって、あんた……今……」
「よく見なさい」
溜め息混じりのジェイドに訝しげな表情を浮かべた紫季はもう一度、紫鶴へと視線を戻す。よく見れば彼女の肩は規則正しく動いていた。それはしっかりと呼吸されている証。生きている……確かに生きている。
「安心しましたか?」
「なっ!?」
紫鶴の上半身を抱き起こすジェイドの顔は意地が悪い笑みを浮かべていた。内心、安堵していた為、ふいを突かれた紫季は顔を真っ赤にしてジェイドを睨み返す。
「覚えておきなさい……紫鶴がどれだかの闇を背負っているのか」
「……あんた、何を何処まで知っている?」
気に入らない……そう思った。たかが二年程度一緒にいたくらいで何を分かるのか。そして何を知っているか。自分の知らない何かを。ギリっと奥歯を噛みしめる。ジェイドみたいなタイプは苦手だと、上手く言い逃げられるだろう。睨みつけたまま手の中の梓水を握り締める。今相手にしても勝てないだろう。紫鶴の攻撃を防ぎ続けていたら右手は痺れていて刀を握り締めているがぷるぷると震えている。
「聞きたいのなら、自分で紫鶴に聞きなさい」
ガキが甘えるな。紫季にはジェイドがそう言っているように聞こえた。ジェイドは紫鶴を抱き上げルークらの元へと戻っていった。