16 堕ち掛けた幸福
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「あははははっ」
笑いながら何度も何度も紫鶴は斬り込んでくる。手元には譜銃しかないにも関わらずその一方的な攻撃を防ぎ続ける紫季。
「ちくしょ…どうなってんだ…」
尺の長さでは譜銃と刀では圧倒的に譜銃の方が不利だ。このままの状態では長くは持たない。
「やられっかよっ!!」
コツンとブーツの踵に何かが当たる。次の攻撃が繰り出されたと同時にしゃがみ込みブーツに当たったソレを拾い上げる。剣戟の間に段々と且つ偶然、紫鶴によって弾き飛ばされた梓水の所まで追いやられていたのだ。しゃがんだままの紫季に容赦なく振り降ろされる葛の葉。譜銃を腰のホルダーに仕舞い拾ったばかりの梓水で受け止める。
「しーき……遊ぼ…」
「ねえ…さ……」
綺麗に可愛らしく微笑む紫鶴に目を奪われる。脳裏に浮かぶは幼き日の姿。そこに隙が生まれた……ハッとして気付いたときにはその愛らしい笑顔のまま紫鶴は紫季に向かって刀を振り降ろしていた。『死』…これが頭に過ぎった。
武家の生まれの人間の戦い方ではない。己を失い暴走するただの殺人鬼のよなうな目の前の少女。自身の他人の命を失うことを何とも思わないほど怖いものはない。
『死』を覚悟したときだった……
「唸れ烈風!大気の刃よ、切り刻め!ーータービュランス!」
その声とともに目の前の少女が消えたのは。警戒しつつ声の主に目を向ければそれは彼女が兄のように慕うジェイドが譜術を放ち、右手にはコンタミネーションで出した槍を持っていた。
「……何を……」
「あなたはそこにいなさい」
低い、が冷静な声でそう言うと起き上がりジェイドに向かって突進してくる紫鶴に向かって槍を構える。「まさか?」と思った通り、ジェイドは突っ込んでくる紫鶴にその手の槍を突き出した。