16 堕ち掛けた幸福
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「紫幻、二の式ーー秋雨!」
「させっかよ!二の式改ーー五月雨!」
上から斬りつけた後、下から切り上げる技なんだけど上から斬りつける時点で紫季の刀によって防がれる。五月雨は秋雨の逆の技……下からの斬りつけが先。相殺するに打ってつけの技。
「初めの式ーー霧幻」
紫季ほどの手練なら、いや手練でも何処からどう攻撃を繰り出されるのか。たとえ頭で分かっていても刃先が動けば目で追ってしまうもの。その隙を一瞬たりとも見逃さない。私は即座に背後へと回り込み紫季の刀を弾き飛ばす。これで決着は付いた……そう思った。
バンっ!
と同時に音が鳴り響いたのは。頬が痛い……焦げ臭い……視線だけを右の方へ向けると髪を結うゴムが無くなっていた。じゃあ、右頬の痛みは?
ツーッと生暖かい何が滴った。鼻に付くのは鉄のような臭い。これはーーああ、ヤバい。これは……また、あの悪夢の再来が訪れる。
「ーっ!なめんじゃねぇよ!『梓水<シスイ>』だけと思うなよ!!」
紫季の手には黒い譜銃……隠し持ってたんだ。ぴちゃ……地面に滴る私の頬から落ちた赤い液体。
ああ、ダメだ。
意識が飛びそう。
「……やっ…」
また、ジェイドに迷惑を掛ける。それは、嫌だ。
「俺はあんたに全てを奪われた…」
わ、たしが…紫季の、全てを、奪った?ど、して……そんな、泣きそうな顔……するの?
「あんたは俺から…父さんも母さんも…家も奪った……あの家は、俺の家じゃなくなったんだ!!」
チャキ……再び譜銃を構え直しその憎しみに込めた瞳で私を見る。
薄れゆく意識の中、紫季が泣いてるように見えた。
「全部……あんたがいるからだっ!!」
よく分かんないけど、ゴメンね。
そう言いたいのに、自身の頬から伝う血の匂いが私から意識を奪っていく……あの日から、あの現象は起きないと思ってたのに。
……もう、ダメだ。