00 始まりの兆し
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「そうかな?…お祖父ちゃん」
先ほどまでの凛とした表情から一転、紫鶴の表情は年相応…高校生の女の子のものだった。可愛らしく笑う紫鶴に釣られるかのように彼女の祖父も微笑む。
「うむ、我が孫ながら大したものじゃ」
「みんなの前で舞うなんて初めてだったから、結構緊張したよ」
感心する祖父に紫鶴はあははと笑う。
「さて、紫鶴」
浮かべていた笑みを消し、目を少し細めて紫鶴を見る。祖父の普段はあまり見せない表情に紫鶴も笑みを消す。
「何度も言うようじゃが、そろそろワシと一緒に住まんか?」
「イヤ」
話を切り出し告げる祖父に即座に返答する紫鶴。あまりの返事の早さに祖父は目を丸くしたが、ふーっと息をつきじゃが…と続けた。
「私も何度も言うけど、当分は一人でやってく。お祖父ちゃんが倒れたら一緒に住むよ」
びしっと右手を前に出し、人差し指を立てきっぱりと言う。孫の言葉にがっくりと肩を下ろす。
「…まだ引きずってるのか?」
祖父の言葉で紫鶴から笑みが消えた。
その言葉は禁句だったのか夕暮れの道場に静寂が宿る。一度目を伏せ、数秒閉じた後、目を開け真っ直ぐに目の前に座る祖父を見つめる。
「引きずってるじゃないよ…何があっても忘れることが出来ないんだよ」
泣きそうな、苦しそうな笑みを浮かべる紫鶴。孫のその顔を眉根を寄せて見つめる。
「…わかった」
「んで、話ってそれだけ?」
さっきまでの今にもなきそうな顔はどこに行ったのか、紫鶴は面倒くさそうに腕を組んで溜息をつく。