13 狂気への始まり
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「紫鶴」
「なに?」
二人で船橋へと向かう途中にジェイドは前を見たまま私の名を呼ぶ。
「敵に無闇に笑い掛けてはいけませんよ。特にあの馬鹿には」
「?…う、うん?」
何となく怒られてる気がするんだけど……さっきのは『あの』ジェイドにもピオニー以外の友達がいたんだとどこか嬉しくてつい、って感じだったんだけど。まあジェイドが嫌だというならもうしない(と思う)けど。
「もうすぐバチカル、か」
「どうかしました?」
ぽつりと呟いた私に、今度は私に顔を向ける。バチカルに辿り着いて、親書を渡してアクゼリュスの救援が済めば、グランコクマに戻れるのに、どうしてかそれは叶わない気がしてならない。何か悪いことが起きるような……けどそれは私の思い過ごしだと首を振り「何でもない」と返す。
「なんだろう。ディスト見てたら、少しピオニーに会いたくなった」
「うるさいところは似てますからね。まあ私は今の方が落ち着きますが」
それを言ったら元も子もないけど。ホームシックなのかな。って思えてしまうのはもう、あそこが私の帰る場所になってしまってるから?それとも心にずっと引っかかっている、一つの事が消えないから?
「あー早く陸に着きたい!」
「あと数日先ですねぇ」
考えを振り払うように声を上げてそう言ったときシンクにやられた肩が痛んだ気がした。
もうすぐバチカルに着く。それが本当の旅立ちとも知らずに。微かにいたんだ肩……それが後に私の命すらも脅かすことになるなんて誰が想像しただろう。私が狂気へと再び落ちるのは先の話。けどそのきっかけになるのは……目の前だった。