12 彼に募り、彼女に蘇る悲しき記憶
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ヴァンはアリエッタを抱き上げ、一人先に屋上を後にした。じゃあ、行こうかと私たちも階段を下りていく。
「ジェイド」
隣を歩くジェイドに声を掛ける。彼はチラッと私の方に首を傾ける。
「聞かないの?さっきのこと……」
「あなたにも私にも互いにまだ隠し事はありますよ。だから聞きません……ですが」
下の広間でのこと、ジェイドなら聞いてくると思ったけど……でもやっぱり気になってはいるみたい。
「あなたがあそこまで動揺する姿は初めてでしたので驚きましたよ」
目を細めるジェイド。このオールドラントに来て二年……色んなことがあったけど確かに、戦意喪失するまでの動揺はしたことがない。
「…そ、だね。私もまだ動揺してるよ」
思い出したことで、手が震えてきた。信じたくない。信じられない……確信も確証もないのに、頭のどこかでは望んでる気がして嫌だ。
「ちゃんと……話すから、もう少し待っ……」
震える手をギュッと握られる。私の不安を察したかのように。握られた手に、珍しく彼の温もりを感じた。
「無理はしなくていいですよ」
「……うん…でも、まだ確信はないけど私の思った通りだったら……きっとジェイドやピオニーも巻き込むことになると思う」
優しい。ジェイドもピオニーもアスランも度が過ぎるくらい私には優しい……それは素直に嬉しいよ。
「私はともかく、あの人は紫鶴の迷惑なら喜んで受けますよ」
もう一度、手を握り直してくれる。ジェイドの言葉に「喜んでいいのかな?」と苦笑いを浮かべれば「それがあの人の生きがいです」と返された。
思わぬ出来事に醜態を晒してしまった。ただ、この出来事は遠くない未来に私をどん底へと突き落とすことになる。それは……私が望んでいたことなのかもしれない。彼が私を………憎んでいる限り私に幸福が訪れることはない