12 彼に募り、彼女に蘇る悲しき記憶
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「恨んでいいから…」
突きつけた刀を手前に、アリエッタの首を斬るために引こうとした時だった……
「待って下さい。アリエッタは教団に連れて帰り査問会にかけます。ですから、ここで命を絶つのは……」
「それがよろしいでしょう」
イオンが私たちの方に駆け寄りながらそう言うと、それに答えるように後ろのほうからも声がした。
「師匠」
振り返れば、階段を上がりこの屋上に現れたのはヴァンだった。討伐に行くと言っておきながら今更、現れるなんて何を考えているのやら。
「カイツールから導師到着の伝令が来ぬから、もしやと思い来てみれば……」
「すみません…ヴァン」
いくら懇願されたからとはいえ、ダアトの最高指導者であるイオンがこんな所まで来てしまった。その身に何かあれば連れ出した私やジェイドはもちろん、導師守護役であるアニスも減給や降格処分では済まないだろう。イオンは自分がどれだけの存在かが分かっている……だからヴァンの言葉に頭をがっくりと落とした。
「過ぎたことをあれこれ言うつもりはありません。アリエッタは私が拘禁したいと思いますがよろしいですか?」
「お願いします。傷の手当てをしてあげてください」
仕方ないと言ったように息を吐くヴァン。イオンが気を失ったままのアリエッタを見た後、私に視線を向ける。
私は無言でアリエッタの首もとに突きつけていた葛の葉を鞘に収める。ここはキムラスカ領だ。マルクトの軍人である私がどうこう言えることではない。
「ありがとうございます…紫鶴…」
苦笑を浮かべて礼を述べるイオンに目を伏せそれに答える。
「査問会、ね……『妖獣のアリエッタ』は、キムラスカ兵を殺し、船を破壊した。その罪、陛下や軍部にどう説明するつもりです?」
アリエッタはヴァンに任せる…と言うことで丸く収まるはずが、ガイの言葉でイオンの表情が堅くなる。確かに、外交に関わること。簡単にはいかない。