12 彼に募り、彼女に蘇る悲しき記憶
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「……うっ……」
港への入り口に入るとともに私やジェイドには嗅ぎ慣れた臭い……血の臭いが充満していた。そのまま前に目を向ければそこには幾つもの死体が転がっている。刀創傷ではなく、獣などに噛まれた傷や爪などで引き裂かれた傷ばかり。さっき、アニスが言ったようにアリエッタの仕業なのだろう。
「行こう」
「あっ、待ってよ。紫鶴!」
嫌な予感がする。このおびただしい血の臭い。転がる死体……そしてアリエッタが従える魔物。こんな被害が及ぶのなら、あの時、私の手で殺しておけばよかったかもしれない。
「(いや…今更だ)」
後悔はしても仕方ない。イオンが同意したとはいえ真っ先に止めたのは私だもん……これは私の責任だ。
「考えるのは止めなさい」
ぽふっと頭の上に自身の手を乗せるのはジェイド。やっぱり、ジェイドにはお見通しなんだな。
「……うん」
私を分かってくれている、必要以上なことを言わないジェイドの優しさが嬉しくて小さく頷いた。船着場が見えて来ると誰かと誰かが争うような音が聞こえた。私たちは顔を合わせてその音の方へと走り出した。
「師匠!」
その音がした場所に出ればそこにはヴァンが立っていた。手には鞘から抜かれた剣を手にしていて、この騒動の犯人であるアリエッタと対峙していた。ヴァンはちらりと私たちの方を見たがすぐにアリエッタた視線を向ける。アリエッタは腕の中をぬいぐるみをぎゅっと抱きしめ、元々泣きそうに見える表情は更に泣きそうに見えた。いつアリエッタが魔物を襲わせてきてもいいように私たちはそれぞれの武器に手をかける。
「……アリエッタ!誰の許しを得てこんなことをしている!」
こんなこと……港に停泊している船を見れば鋼板やらあちらこちらが傷だらけで、各所から煙が立ち上っていた。アリエッタはヴァンに問われ、体をびくりと震わせる。