10 月夜に浚われて
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「大丈夫か?」
「大丈夫。大丈夫。ちょっとビックリしただけだから」
驚いた拍子に間抜けにも尻餅をついてしまった。一定の距離は近づけないガイは葛の葉を鞘に納めて先程手渡したときのように私に刀を差し出し、そのまま自身の方に引いて私を立たせてくれた。手を差し出すことが出来ない。普通に女性に振れられたらこんな苦労はしないのにね。ってそれは一番ガイが身に染みてわかってるね。
「良い刀だな」
「ありがとう…何せ家宝だからね」
立ち上がらせてくれた後、そのまま葛の葉を返してくれた。刀を褒めてくれるガイに素直にお礼を言って笑ってみる。私の言葉に驚いたのかガイは「えっ?…」っと驚きながらも何か聞きたげな表情を浮かべて口を開こうとしたときだった。
「迎えに行って帰ってこないのもどうかと思いますよ」
後ろから声がした。その声の主にガイは「すまない」と苦笑を浮かべた。当然というか、その声の主はジェイドだった。人に報告書を提出させに行かせた張本人がここにいるってのはどうなの?
「……人に行かせたくせに」
「さあ、戻りますよ」
すんなりと無視された私はジェイドに促されて宿屋と足を向けた。その時にジェイドが一瞬、ガイを睨んだのも気付かなかったし、そのガイが一人後ろでぽつりと呟いた言葉も聞こえなかった。
「…君に触れられたらよかったのにな」
この言葉の意味は今は知らない。ジェイドがガイを睨んだ意味も分からない。
この時から始まったのか、この時には始まっていたのか……全ては必然に自然に流れているのか。そんなものは分からない。このときの私は"己の芯の弱さ"に侵され始めていたのかもしれない。この先で起こる…それに私は………