～ルーク&ティア～





「るるるルーク！」
「だ、大丈夫だって。あとはジェイドと雪姫か……雪姫なら大丈夫だろ？」



顔面蒼白のティアはルークの服の裾を掴んで怯えながら辺りを見回す。ルークはルークでティアが普段の凛とした姿から可愛らしい女の子になっていることにドキドキしているのか顔を赤くして彼女を励ましていた。



「おおお俺が…いいいいるだろ？」



違う意味でガチガチな二人。その様子を並んで眺めているもう二人。



「何だか……脅かしづらい雰囲気ですね」
「止めますか？」



どう見ても初々しいカップルに見えるルークとティア。この二人のいい雰囲気を変えてもいいものかと溜息を吐く雪姫。どうします？と問うジェイドに



「冗談！」



と笑みを浮かべて立ち上がる。



「雪姫」
「はい？」



自分の持ち場へと移動しようとすると座り込んだままのジェイドに名を呼ばれて立ち止まる。早くしなければ二人が来てしまうというのに怪訝な表情のジェイド。



「その化粧は……あとで落としますよね？」
「はぁ…私たちの番の時は、そりゃあ」


変なの…と首を傾げ自分の持ち場へと小走りに去る。



「そろそろか？」



暗い廊下を歩くルークの肩を誰かが叩く。ティア？と振り返ればティアは両腕でミュウを抱き締めている。じゃあ、誰が？と思ったその時ーー



「う～ら～め～し～や」


長い黒髪を前に垂らし白い着物を着て両手を胸元に上げている女が暗闇から白い光と共に現れた。しかも奇妙な声を出して……光に照らされた顔は青白く、口元には血が滴り落ちている。



「ひぃっ！」



目の前に現れたまるで死人のような女にルークは立ち止まり短い悲鳴を上げた。急に立ち止まった少年にティアは「ルーク？」とそっと前を覗く。



「……きゃああぁぁーっ!!……はぁ…」
「てぃ、ティア!?」



女を見て気を失ったティアを抱きとめる。ほっとするのも束の間、ガブッと音を立て何者かがルークの首に噛みついた。



「いてぇっ！誰だ…よ……」



首を押さえて振り返ると赤い瞳と口元を光らせた男。白い光を照らされニヤリと笑うその姿は悪魔のようだった。



「うわああぁーっ!!」



屋敷中にルークの悲鳴が響き渡った。