*子供になっちゃった！*






「……何でこんな事になったんだ」



目の前の惨状に眉を顰めるルーク。そんな彼の肩をぽんっと叩いたのはガイだった。他の全員はある一人を一生懸命に囲っている。その中に皇帝と呼ばれる男もいた。



「可愛いなぁ」
「ほっぺ、ふにふに～」



多くの大人に囲まれているのは黒い髪を一つに結い、青いワンピースを着ているまだ五才くらいの女の子。ただ左右の目の色が茶と赤とで違うだけ。ピオニーに頭を撫でられ、アニスに頬を突っつかれているが本人はキョトンとしている。



「本当に愛らしいですわね」
「……可愛い」



頬を赤く染めてうっとりするティアに少女はじっと見つめる。



「てぃにゃ？」
「――っ!?」



まん丸の目で見つめ首を傾げれば、ティアは声にならない悲鳴を上げて倒れた。どうしたのだ、と皆彼女に側に寄ろうとしたが倒れたティアの顔を見て、納得したように息を吐いた。



「でもでも、どうして真咲が子供になっちゃったんだろう？」



未だキョトンとした表情で辺りを見回す少女―真咲に一同はお互いの顔を見合わせる。



「まぁいいじゃないですか」



気付いたら幼くなっていた真咲を抱き上げたのは真咲を可愛がるアニスらの後ろで黙ってみていたジェイド。



「じぇーど？」
「そのうち元に戻るでしょう」



無垢な表情を向けられてるから、普段の真意がわからない笑みではなく、毒抜けたような笑みを浮かべるジェイド。



「まさか……ジェイド。おまえの仕業じゃないだろうな」
「てゆーか、大佐が抱っこすると『親子』みたーい」



自分の恋人が約二十歳も若返ってしまったというのに全く慌てない様子に、さすがのピオニーも顔をひきつらせる。ルークらも怪しいといった視線をジェイドに向けている中、アニスがふとそう言った。皆、アニスを見た後、真咲を抱っこするジェイドを見る。



「……確かに」
「意外と様になってるな」
「いつものふてぶてしさがありませんわ」
「私を何だと思ってるのですか」



各々の感想を述べれば、けして褒め言葉とは取れなく、顔を顰める。



「あにちゅ。あにちゅ」



ジェイドに抱かれていた真咲がアニスの方へと手を伸ばす。