束の間の一夜
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「珍しく我慢しませんね」
私の黒髪を優しく撫でる。その行為が彼の温もりが気持ちよくて微睡みを覚える。
「ジェイドさんのタイミングが良すぎるんです」
抱きついたまま小さく息を吐く。今回の件はちょっと参っていた。だから本当は顔を見た瞬間に抱きつきたかった衝動を我慢した。
「あなたから甘えてくる事なんて滅多にないので私としては嬉しいですけどね」
瞼にそっと唇を落とされる。もう甘えるという年齢でもないけど、不安が募ればそうしたくもなる。不安、というのよりは怖いだけかもしれない。自分の知らない未来。それは当たり前なんだけど、トリップしたこの世界に私の生まれ育った世界の物が、しかも平気になるかもしれない物があるかもしれないと、しれないってだけで怖い。
「あなたが不安を抱くように、私たちも未知なる物に不安を抱いています。それを解消する為に私はここにいるんですよ」
「……はい。いろいろ考えすぎて、疲れちゃいました」
一人で全部抱え込んで考えていた訳じゃないけど、相談出来ない部分があったのも確か。私も苦労したけど文字の読み書きはかなり重要だ。オールドラントに比べて私の世界の文字は種類は文法が複雑すぎて一朝一夕で教えられない。せめて最低限でもとジェイドには表を作って渡したけど。
「真咲の世界の文字ですが、さすがにまだマスターはできませんが大まかは理解しました。あとは調査しながら習得していきますよ」
「さすがですね」
まぁ平仮名やカタカナくらいなら覚えるのは難しくはないだろうけど、漢字を含むともう少し時間は掛かるだろう。それでもジェイドだったら一ヶ月もかからずなんとかしてしまいそうだ。
「あなたの世界の文字とフォニック文字で資料を作成してくれたおかげですよ」
今度は唇に触れる程度のキスを落とされる。これだけで元気が出てしまうのだからなんて現金なんだろと自分で呆れてしまう。
「私にできる事なんて、たかが知れてますから」
専門知識を持っている訳じゃない。遺跡を調査する為の権限を持ってる訳でもない。実は大した事なんてしてないんだ。ただ他の人よりはそれに関しての知識があるだけ。だったら出来る事だけでもしておこうと思っただけ。