空からの再会
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「フィリン。お前はこの後、どうするんだ?」
「カラハ・シャールに忘れ物をしてな。取り戻ろうと思ったのだが、道に迷った」
さすがに樹界を徘徊するには無理があったようだ。だから街の方角を確認するために高い木の上に登っていた。確認した後降りる際に足を滑られて落ちたとさっきの経緯を話せばアルヴィンに盛大な溜息を吐かれた。
「……呆れてものも言えねえな」
「キミに呆れられるのは心外だ」
やれやれと肩を竦める。おい、てめぇ…と聞こえたのは聞かなかったフリをしよう。そこを広げる意味はない。
「キミらもだろ?」
「……そうです」
警戒心が消えないのか、構えたように立つジュード。その彼の腕にエリーゼはしがみつき、ミラはただ腕を組んでこちらを見ていた。
「研究所への進入でスパイ容疑を掛けられ国外へ脱出。何らかの理由でイル・ファン戻らなきゃならなかった。が、途中のカラハ・シャールに入るには検問があった。検問を避けるためにこの樹界に入った……といったところか」
長々な説明のあと、彼らの顔を見たら表情はより堅くなっていた。どうやらこれも図星だったようだ。
「……お前、的確に当てんなよ」
「状況から推測しただけだ」
頭をガシガシと掻きながら溜息を吐くアルヴィン。別におかしな事を言った覚えはない。スパイの案件はクレインからも効いているし、私もその時は街にいたから噂を聞いている。彼らはこの樹界を海停側から来た。そしてついでにイル・ファンで別れたアルヴィンも一緒。ここまでヒントがあればこの程度の答えは導かされると思うのだが。
「……やりすぎたか?」
「そうじゃないが……タイミングがわりぃかな?」
うーんと考え出されてしまった。自分の見解はハッキリ主張することにしているからな。それの何が悪いのかがわからない。
「とりあえず、カラハ・シャールに着いても衛兵に通報などせぬよ。私がそれをする意味もメリットもない」
周りが騒ぎ立てしまったらどうすることもできない。が、誰も気づかぬならそれでいい。巻き込まれるのも正直面倒だ。事件事は嫌いではないが、いらん注目を浴びるのは好きではない。
「お前が本当にそうするという保証は?通報すれば懸賞金も入るだろ?」
「保証と言われると困るが騒がれるのは好きではないし面倒くさい。ついでに今は金に困ってないから金に興味はない」
その答えでは不服か?そう訪ねても返事はない。まいったな。これではカラハ・シャール戻ろうにも戻れない。アルヴィンは彼らの誰かに雇われてるだろうから助けてくれることはしないだろう。
「どうすんだ、フィリン」
「そうだな……」
追われてるという事で気が張っている。自分ら以外、信用も信頼もしないと言ったところか。
「もし街でそんな素振りを見せたら私を斬ればいい」
それでおしまいだ。両手を小さく挙げる。通報されるのが怖いならそうすればいい。ジュードやエリーゼはできなくてもミラならやる。そんな雰囲気を持っている。
「ふははははっ!わかった。そうさせてもらう」
「ミラ!?」
その場で腹を抱えて笑い出すミラ。その笑いがさっきまでの緊張感を消し去る。
「とりあえずお前を信用しよう」
「賢い選択だ」
こんな樹界でやり合うのは無駄な労力を費やすだけ。どれだけ早く抜けるのかが重要。それは彼女もわかってるだろうがな。
「ああ、それと」
先を急ぐために歩き出したとき私が口を開く。先を歩いていたミラとエリーゼが振り返り、隣と後ろのジュード、アルヴィンの視線も向けられる。
「私の興味は知識だ。智を得ることには貪欲になるが、他のことはどうでもいい」
「こいつはこういう奴だ」
だからあんま気にすんな、とバシバシ頭を叩かれる。それをキョトンとした顔で見るジュードたち。
「フィリン君は僕たちを捕まえない?」
「キミ達個々に興味はある……何をしでかしたも込みでな。が、だから捕らえるとかはせぬ」
面倒くさい。もう一度言うとティポに噛みつかれた。ぬいぐるみに噛まれるという体験は初だな。なかなか離れてくれないのは難だが。
「フィリンって何してる人なの?」
「本分は学者だ。今は色々理由があってな。街に着いたら話してやろう」
ジュードの問いに答えると後ろから視線を感じた。何かを企んでいるのか、それとも彼らには話されては困るのか。とは言え私が簡単に応じるとは思っていないだろう。アレの思惑通りに行くのは些か気に入らないしな。