雪の地にて
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「まだユルゲンスさん戻ってこないのー?」
宿に入ってからどれくらい経った頃か、暇を持て余していたらしいレイアがぶーと頬を膨らませる。そう言えばかなり時間が経っているようだ。ジュードと話し込んでいたからか全く時間を気にしていなかった。
「まだだよレイア」
「むー…ねぇエリーゼ。街の観光でもしよーか?」
ジュードに宥めらるも暇なのは変わらないからかレイアは今度はエリーゼへと向く。当のエリーゼは部屋に入ったから床に座り込んだまま一言も発していない。レイアが話しかけても見向きもしない。
「エリーゼさん、行ってきたらどうですか?」
「ねぇ、エリーゼってば~。ティポがはしゃいでくれないからわたしばっか、うるさいみたいだよ」
前からそうでしょ、とジュードが溜息交じりに言うと、うるさい!とレイアはあっかんべーをする。
「じゃあさ、ティポみたいにエリーゼも元気におしゃべりしない?エリーゼの口から、あなたのこともっと教えてほしいな」
観光に行かないなら会話をとレイアが持ち掛ける。が、彼女から発せられたのは待っていた言葉ではなかった。
「レイアはうるさいなー。みんなの足をいっつもひっぱってるくせにー」
一気に空気が冷える。エリーゼの……ティポから発せられた言葉はここにいる全員から言葉を奪った。レイアは目を見開き、呆然とエリーゼを見つめる。
「エリーゼ、言い過ぎじゃないか?謝った方がいい」
「ミラも…レイア も…!」
さすがのミラも黙ってはおらず立ち上がりエリーゼの側に行く。だが、そんなミラをエリーゼは睨み付ける。
「とりあえず落ち着け。エリーゼ。不満があるなら黙ってないで口にすればいい」
ジュードに説明するために使用していたノートを閉じて彼らの間に入る。
「だが突然、人を愚弄するのは感心出来ないな」
「っ!!え、偉そうなことを言わないでください!だってドロッセルのお兄さんを助けられなかってくせに…!!」
そう泣き叫んでエリーゼは部屋から飛び出した。彼女の言葉に私は眉根を寄せ、事情を知らないレイアを除く四人は表情を険しくした。
「エリーゼを探しに行くぞ。この寒さの中、勢いのまま飛び出したのでは一人でどこに行くかもわからぬからな」
ジュードが気を遣って声を掛けようとしたがその前にエリーゼを探しに行くことを提示する。それに意見はなく全員頷く。
「フィリンさん……」
「エリーゼの言うことは事実だ。気付きながら助けられなかったのだからな」
手の傷跡は戒めだ。一生消えなくてもいい。本当ならドロッセルに責め罵られてもおかしくはないのに、彼女は責めず逆に私の心配をした。彼の遺言通り、側にいてやりたかった。今こうしているのは私のわがままなのだ。
「行くぞ」
「はい」
問題はどこにいるかだ。この街には今日来たのが初めての者ばかり。土地勘がない者が探すのだから自分たちも気をつけなければならない。
「……あれは」
別れて探した後、合流し奥の方へと全員で向かえばそこには巨漢の人物がいた。さらにその奥に金髪が見えた。
「ジャオ!」
その名を呼べば彼はゆっくりと振り返る。私たちが勘違いをしたと思ったか偶然会っただけだとエリーゼから数歩離れた。
「さっきはごめんね。エリーゼ、ティポのことで寂しい想いしてたのにね」
レイアが側に寄り謝罪の言葉を口にした。正直なところ、彼女が謝罪の言葉を口にする必要は無いと思う。それでもそう言ってしまうのがレイアのいい所なのか悪い所なのか、まぁ性分なのだろう。
「ほら、わたしって遠慮なく言っちゃうとこあるでしょ?許してよ」
「…イヤです…」
レイアの方から歩み寄ろうとするがエリーゼはそんな彼女を見ることなく拒絶する。
「レイアもミラも……フィリンもキライ!友達だと思ってたのに!」
先日の一件でエリーゼは人を信用しなくなってしまったのかもしれないな。誰が悪いわけじゃないのだが。エリーゼ自身がついてくると決めたのだから何があっても自己責任だ、と言いたいところだが言える空気ではない。甘やかすのは良くないが、言ったらエリーゼは二度と心を開くことはないだろう。人とは何と難しい生き物なんだろうな。
2/2ページ