雪の地にて
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……雪、か」
しんしんと降り続ける雪を見上げる。雪の降る街ケテルブルクには行ったことはないが、同じ様な寒さなのだろうか。
「なんだ、寒いのか?」
「いや、雪を見るのが初めてなだけだ」
まさかシャン・ドゥを出てすぐにこの様な景色があったとは。以前あの街に行ったときはこの世界のことを何も知らなかったから当然その事も知らなかった。
「……エリーゼは変わらずだな」
「仕方ないだろ」
真実があんなんじゃな、とアルヴィンは肩を竦める。それもそうなのだがな。やはり私は人とは違うのだな。アルヴィンですら、ああ言うのに私にはエリーゼを可哀相とは思えない。売られて実験体として使われていたと言うところは、さすがに不道徳だとは思うが。
「見えてきたぜ。あれが、ア・ジュールの首都カン・バルクだ」
吹雪の先にうっすら見える街先。何故人は好んで雪の中に住むのだろうか。オールドラントでも南方の大陸で育った私には理解できない。一番北でケセドニアという砂漠の街なのだから。
「やっと街だーっ!」
街の中へと入るとレイアが両手を挙げて喜ぶ。まぁ街に入ったからといって雪が止むわけではないのだが。だが建物という景色があるだけでだいぶ違うのだろう。皆、辺りをキョロキョロと見回す。この街もかなり面白いな。時間が出来たらゆっくりと見て回るとしよう。
「あれが世界でもカン・バルクでしかお目にかかれない、空中滑車さ」
街の中で一番目立つソレ。ソレを眺めているとユルゲンスが誇らしげに説明する。空中滑車?と首を傾げるとユルゲンスは、ああと頷く。
「カン・バルクは山地につくられた街で、いくつかの地区をあれで築いているのです」
なるほど。確かに滑車で繋げれば時間も短縮過ぎる。私の故郷でもあるバチカルにもあったな。港と街を結ぶ天空客車が。人の知恵というものは世界を越えても同じものなのだな。
「ワイバーンの許可を取るついでに、謁見を申し入れてみるが、多くの民が謁見を望んでいるからずいぶん待たされるかもしれない。宿を取って待っていてくれ」
ユルゲンスは私たちにそう言って一人王城へと向かっていった。この国の人間ではない私たちは彼に頼むのが一番だろう。
「ユルゲンスさんに頼まなくても、何とかできないかって思ってるでしょ」
何か考え込む仕草をするミラにジュードが苦笑しながら指摘する。言葉を詰まらせるミラに困るようなことはしてはダメだと注意されそのまま黙ってしまった。
「彼の言う通り宿で待っているとしよう」
慣れぬ極寒の地で長々と外にいるのは得策とは言えない。私の言葉にエリーゼを除いた全員が頷いた。エリーゼに関しては暫くは放っておくしかないだろう。
「フィリンは寒いのは苦手なの?」
「ん?苦手というか、私は南方の方出身だからな、寒い土地はあまり縁がない」
故郷であるバチカルを出てからはシェリダンとベルケンドが主に私の生活の拠点だった。どれも南方の街だ。
「お前のそう言う話って聞いたことないな」
「聞かれたことがないから話したことはないな」
彼らに話したのは私の力についてが殆ど。生活に関することは殆ど話した記憶がない。
「行ったことがなかったから苦手かと聞かれるとわからんな」
研究に明け暮れる毎日。だから苦手かがわからない。研究室から出ることが殆どなかったのだから。
「フィリンって学者なんだよね?どんな研究をしてたか聞いてもいい?」
「構わんが……」
「やめとけって。明日の朝まで掛かるぞ」
それに関しては否定はしないが、いくら私でも状況くらいはきちんと見るぞ。
「こやつのことは放っておけ。掻い摘まんだ説明ならしてやろう」
マナではない私の力に興味を持っていることは知っている。勉強熱心な者は嫌いじゃない。
「……フィリンって僕とそんなに変わらないのにいろいろ研究してるんだね」
「興味を持ったものを片っ端から研究してるだけだよ」
智を求める欲求だけは止まらない。これが私なのだから仕方がないのだが。
「私かはすればキミも興味の対象だぞ」
「ええっ!?」
クスリと笑って言えばジュードは大きく驚き、何故か私から離れた。
「フィリンさんに人体実験されるかもしれませんね」
「人と精霊、か。面白そうだな」
「ローエン!フィリンも怖いこと言わないでよっ!!」
冗談に聞こえないんだから…と肩を落とす。調べたいのは山々だが今は出来ないのが残念、言ったらからはどんな反応をするだろうか。