その責を誰に問うか
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「ジャオ、エリーゼはなぜ研究所にいた?」
そもそも何故エリーゼがここにいたのか。誰もが疑問に思ったことをミラが問う。少し躊躇いがちにジャオは口を開いた。
「…連れて来られた。売られたようなものだ。娘っ子のような孤児を見つけては研究所に連れてきていた女に……名は…」
「…まさか…イスラ…?」
彼も、彼の中でピースが繋がったか。私が思うが通りになったか。言動のおかしさもさることながら、エリーゼを見る目が、すでにおかしかった。
「おお、たしかそんな名であった」
「密猟者みたいなもんだな」
それをキミは知っていただろう?と問いたいところだか、それはまた今度にしておこう。
「…わしが言えた義理ではないが、頼む」
以前遭遇したときは連れ去ろうとしたというのに、今度は頭を下げるか。
「あの娘っ子を、これ以上一人にせんでやってくれ」
もう一度頭を下げたジャオは密猟者を追うためにこの場から去っていった。そして私たちも先を行ってしまったエリーゼとレイアを追うことにした。
「レイア、エリーゼは?」
吊り橋まで来るとようやく二人の姿を確認できた。何かあったのかレイアの様子も少しばかり暗い。エリーゼは先ほどの件でかかなり機嫌が悪く見える。両親、か……私の最後の記憶はあまりよいものではなかったな。
「ともかく街に戻るか」
「そうだね」
いつまでもここにいても仕方ない。街に戻って確かねばならぬ事もある。これに関してはジュードも同じ事を考えているだろう。念のため確認しておくか。
「ジュード。少しよいか?」
「フィリン?どうしたの?」
真ん中を歩くジュードの側に立つ。後ろにローエンが来るように歩き、更に後方へと視線を向ける。彼の視界に私が入らぬように気を付けて。そしてジュードとの会話を周りに聞かれぬよう、出来るだけジュードに近付く。
「フィリン?ど、どうしたの、本当に……」
「キミに確認したいことがある」
慌てるジュードに小声で割り込むと、聞かれてはマズい話だと察したのかジュードは表情を変える。なに?と視線は前方に向け小声で返事をする。
「シャン・ドゥに来てからの一件とエリーゼの件……繋がったか?」
「――っ!?」
確認したかったことがそれだとわかるとジュードの顔色が変わった。息を飲み、目を見開いて私を見る。
「街に入ってすぐの落石の時からずっと気になっていた」
「最初から?」
あまりにも偶然すぎる。あんな都合よく医者が来るのか。何かあると言ってるような雰囲気。そして言い回しも少々不自然なところがあった。
「極めつけは最初の会話と決勝を知らせる鐘が鳴っときの少女との会話」
「うん。僕もそれに引っかかった」
やはり、か。ジュードのように頭の回転が速いものなら気づかぬ訳がないか。一つ一つおかしいと思った部分を繋げていくと一つの答えになる。
「そしてさっきのエリーゼの件だが……」
「それも、街で会ったときに様子がおかしかったよね」
エリーゼをリーベリー岩孔の研究所に連れてきたのがイスラだと言うことは先ほど確認した。
「彼女はアルクノアとも繋がりがあるだろう」
「僕もそう思う」
次に疑ったのは闘技場での食事。誰が毒を入れたかはわからぬが、彼女が本当に医者ならば毒薬の生成法も知っていてもおかしくはない。
「キミも同じ答えに辿り着いたようだな」
決定的な証拠は手にしていないが、色々と辻褄が合う。自身では上手く隠しているつもりなのだろうが、思わぬところからバレることなど多々ある。
「街に着いてからフィリンが考えてたのはこの事だったんだね」
「ふむ。怪しいと思ったものが今回は全て繋がっていただけだ」
まるでパズルのピースの如くな。と小さく首を振れば、ジュードも黙ってしまった。
「この事は彼女に確認するまでは皆には言わぬほうがいいな」
「うん、わかった」
あくまで私たち二人の推測でしか過ぎない。あの手のタイプは少々追いつめれば勝手に自白するだろう。
「なんだ、なんだ。優等生と密議かぁ?」
「キミには関係ないことだ」
あると言えるわけがない。彼もこの件に関しては関係者なはず。ジュードには言っていないが、間違いないだろう。
「それとも、勉学に励みたいか?」
「いや、やめておく」
話の内容が小難しいことと察したらしく肩を竦めて拒否する。私が言うと洒落にならないとでも思ったのだろう。まあこちらとしては助かるがな。