その責を誰に問うか
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「んだよ…俺に任せるんじゃ、なかったのかよ…」
「キミはともかく、エリーゼは心配だからな」
キミと一緒というところが、舌打ちをしたアルヴィンにそう返してやれば、更にムッとした顔をした。
「ミラ、ミラぁっ!うわーんっ!」
傷だらけのアルヴィンの傍らに座り込んでいたエリーゼは私たちに気付くとすぐに立ち上がりミラに抱きつく。がっしりと抱きつき泣き出した。
「どうした?ケガをしたわけでもないようだが……」
「ティポさんも無事のようですね」
突然泣き出した理由がわからない。が、その理由を知ってると思われるアルヴィンは視線を逸らした。ティポが側にいるというのに拾うでもなく、ただ泣きだす。そしてティポ自体も動かない。何かおかしい。
「はじめましてー、まずはぼくに名前をつけてねー」
エリーゼが泣き出した理由はこれか。皆もつい数時間前までのティポを思い出すとその様子に驚きを隠せないでいる。何があってこのような状態になったのだろうか。
「アルクノアの一人がティポから何か抜き出した途端、そうなっちまった」
変わり果てたティポに戸惑いを隠せないでいる私たちに説明をするアルヴィン。何かを抜き取った、か。
「ティポ…やっぱり仕掛けで動いてたんだね」
「仕掛け…?ジュード、仕掛けって…?」
苦い顔をするジュード。何かを取り出したらおかしくなった。まるで機械を初期化したような状態になった。その意味がわからないエリーゼはミラから顔を離し、ジュードへと向ける。
「うん。自分で動いて喋るようにつくられていたぬいぐるみだったんだよ」
「でも、それでも…お友達だったんです」
とある村でジュードたちが出会い、村人が彼女に石を投げているのを見かねて連れてきたと言っていたな。それまで友達とも家族とも言える存在はティポだけだった。そんなティポがこのような状態になってしまうとは。
「アルヴィン、アルクノアは?」
「一人はやったが、もう一人には逃げられた」
「ん?二人だけだったのか?私を襲った奴は……」
私と対峙したのは二人。その二人に止めを刺そうとしたら隠れていた誰かに攻撃されたのだが。共に行動はせず、何かあったときのフォローを入っているのか?
「お前を襲った奴は知らねぇ、見てない」
「……そうか」
逃げられた今となっては気にしても仕方ない。ふと、視線をミラへ向けると足下の黒匣を見つめていた。
「アルヴィン、感謝する」
エリーゼをやんわりと自身から離し、地面に転がっている黒匣を踏みつける。無表情で踏みつける様を見てエリーゼが目を見開く。
「ミラ、ティポは…?」
ティポの事は一言も触れないミラに不信感を抱いたのか恐る恐る訊ねる。
「抜き取られたものを取り返せば、元に戻るんじゃないかな?」
「アルヴィン、アルクノアが逃げたのは?」
「とっくの前だよ」
代わりにジュードが答える。それを聞いてミラがアルヴィンへと振り返るが、彼は無駄だと言わんばかりに首を振った。
「では、盗まれたものを取り戻すのは難しいだろう。もうここに用はない」
すっぱりと言い切ったミラにエリーゼは驚愕の表情を浮かべる。どうして、と言いたい風に。
「え…でも…ミラなら…」
「お前が奴らを捜したいというなら、止めはしない。だが、それならお前とはここでお別れだ」
ミラの言葉に誰もが言葉を失った。そしてエリーゼはみんなを見回すが誰も何も言わない。捜してやりたい、が何の手がかりがないというのに捜しようがない。皆もわかっているのだ。無駄だという事を。そんな私たちを見てエリーゼはローエンから奪うようにティポ掴んだ。
「……何かしてやろうにもこの状況ではな。それに、私たちの目的とも異なる……意外とやるせんものだな」
「フィリンさん…」
今までそう言うことを思ったことは殆どないが、少々……
「私が取り逃がさねば、こうはならんかったのにな」
御託など並べず、不意打ちでも何でもいいからさっさと攻撃して止めればよかったのだ。明らかに私のミスだ。
「フィリンさん。そのような考えは止めて下さい」
「キミには隠し事が出来んな」
私の考えを読んでいたか。皆と離れ、アルクノアを追い、ティポの中にあった装置を取り戻そうと考えていたのだが、それを完全に読まれていたようだ。一人でというのが無謀だというのだろう。責任を感じなと、彼の目が語っている。