見え始める闇
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「ああ、来てくれて助かった!執行部が急きょ決勝戦を行うと言い始めたんだ」
闘技場へと到着すると私たちに気が付いたユルゲンスは一瞬だけ安堵の表情を見せたが、すぐに焦ったようなものに変わった。聞けば、ルールを前王時代のものに戻すと言いだしたと。前王時代といえば確か相手が死ぬまで戦う一対一の試合。
「どうする、ミラ?」
ユルゲンスの話に全員が表情を歪めた。問題は色々。
「うむ…ワイバーンは必要だ。辞めるつもりはない…が、解せんな」
「何故前王時代のルールで行うことに…」
「やめておけよ。こいつは、おたくの命を狙ったアルクノアの作戦だぜ」
急きょ、前王時代のルールへと変わったという理由。それがどういう理由か、と口にしたところでアルヴィンが口を挟む。どちらかと言えばある程度危険なことでも自分に利益があれば止めぬような男が、止めに入った。
「アルクノアの?!」
「あっれー?なんでアルクノア君が知ってるのー?」
彼の口から突如出たその名にまた皆の顔色が変わった。それ以前にアルヴィンの口からアルクノアの名とその目的が発せられたことの方が気になるところだ。
「…いいのか?」
「さっきの礼だよ」
ミラがアルヴィンの様子を伺う。二人の妙なやりとりに首を傾げる。
「なんの話?」
「アルヴィンは、アルクノアと関係している」
隠すことなく言ったミラの言葉に全員が驚きを表す。何かしら関係していると思っていたが、やはりと言ったところか。
「んー、すまん。仕事頼まれたりしてんだ」
だからアルクノアと関係があると。傭兵である彼だからそういった繋がりがある、強ち嘘ではなさそうだが。少々気になることもある。しかし今は詮索をする時ではないだろう。
「まさか…今回の事件も」
「あれは俺じゃない。俺も食ってたら死んでたとこだぜ?犯人も知らない。仕事つっても、小間使いにされただけだしな」
怪しむジュードたち。皆の視線がアルヴィンに注がれる。しかし昨日の件はアルヴィンは関係していないと。確かに、食事を口にする寸前に気づき止めたから私たちは毒を口にする事はなかった。
「なら、アルクノアの仕事はもうしないって約束してくれる?」
「わかった、誓うよ」
ジュードが約束を取り付ければアルヴィンはすんなり誓うと返事をする。それに、よかったと、笑顔を見せるジュード。人が良すぎるのにも程があるがそれが彼の良いところだろう。そんな純粋なジュードはアルヴィンには好ましく思わぬだろう。いや、自分が持たぬものだから妬ましくなる。
「アルヴィンさん、アルクノアの作戦はわかるのですか?」
ローエンの問いにアルヴィンは頷く。
「俺が聞いた限りじゃ…やつら、決勝のルールを変えてミラを殺す気だ。勝ったとしても、疲労困ぱいになったおたくを客席から狙い撃つ二段構えだとよ」
「なんて奴らだッ!神聖な大会をなんだと思っている!」
大会に乗じてミラを始末する。やり方としては卑怯極まりないが……しかし、何ともお粗末なものだな。
「何とも穴だらけな作戦だな。私が代表で出なければ簡単にくじける。だが…このくだらん罠にははまってやる。やつはを引きずり出してやろう」
ニヤっと笑うミラ。こうでなくてはならんな。ジュードももうミラという人物を理解しているからか、仕方ないといった風に笑みを浮かべる。
「キミの作戦に私は乗るよ。ミラが囮となっている間に客席にいるアルクノアを叩けと言うのだろう?」
「話が早くて助かるな」
自ら罠にはまるというミラにレイアたちは反対の意を示したが私は逆に笑みを浮かべた。昨日は不快な思いをさせてもらったからな、それ相応の礼をしなくてはならん。
「普通ならいつ出てくるかわからないけど、今ならおびき出せる…理にかなってるよね」
「今ここで手を打っておかないと、次の手を考える時間を与えてしまう。そうすれば、もっと被害が大きくなる可能性も否定できない」
向こうが出てくるとわかっているのだ。待ち伏せして叩いてしまったほうが今後に繋がる。アルクノアはミラをイル・ファンには行かせたくないだろうし。
「では客席は任せたぞ」
「って、フィリン。お前は何処に行くんだよ?」
手を振って私は来た道を戻る。
「それは秘密だ。ローエン。すまぬが後を頼む」
「お気をつけて」
私の意図を察したのかローエンは軽く頭を下げた。理解できないレイアやエリーゼは何度も私の名を呼ぶが、後でな。と私はこの場を後にした。