見え始める闇
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「ほぅ、キミも一緒だったのか」
ミラを見つけたと思ったら側にはアルヴィンもいた。この男が何もなく一緒にいるとは思えんが。
「なんだよ。俺がミラと一緒にいたらいけないのか?」
「いや、ミラを捜してたらキミもいたというだけのことだ」
気にするな、と私が笑うとアルヴィンは少し顔をひきつらせる。
「それより、お姫様が何か言いたそうだぜ」
アルヴィンの視線につられるかのようにエリーゼを見ると、彼女は何か言いたげに皆の顔をちらりちらりと見ていた。
「エリーゼ、どうしたの?」
そんなエリーゼにジュードが訊ねる。あのね、と口を開くエリーゼ。
「イスラさんが私のこと、何か知ってるのかも…」
「そういえば、エリーゼを見た後、いきなり顔色変わったよね」
でも逃げるみたいにして、どっかいっちゃったー、と残念そうに眉を……ではなく目か……下げた。次に会ったときに詳しく聞こうというレイアに頷くエリーゼ。その時だった。街中に轟音とも思える鐘の音が鳴り響いた。
「あんたたち、闘技場へ急いだ方がいいんじゃないの?」
あまりの大きな鐘の音に驚く私たちに声を掛ける一人の女性。何故、私たちが闘技大会への参加者だとわかったのかと、首を傾げる。
「鐘が鳴ったら大会が始まるのよー」
「え、大会が始まったちゃうの?もしかして早く行かないと失格になっちゃったり?」
女性の隣にいた女の子が教えてくれる。それに驚いたレイアが声を上げる。さらにそれに驚くミラ。
「いいのか?大会の辞退を考えていたのだろう?」
「迷いながらやってみるのが人間。そう言ってくださったではないですか」
昨日の今日だ。何があるかはわからない。が、何事もまずはやってみなくてはのローエンが言うとミラは頷く。
「ふふふっ。借りは返さねばならんしな」
「お前……目が怖えよ」
私を不愉快にした罪は重いぞと付け加えると、全員の顔が引きつった。当然だ。あのような手を使ってただで済ますわけがない。
「あ、あの、どうして僕たちが参加者だってわかったですか?」
「この時期によその街の人が集まっていたら、それは参加者か観客に間違いないよ」
ジュードの問いに女性が微笑んで返す。そして女の子が、そんなのここじゃジョーシキよ、と言って手を振りながら去っていった。
「ジュード…?」
「ごめん。何か頭の中で引っかかっただけで…」
と考え込んでいたジュードにレイアが名を呼ぶ。ただそれだけとジュードは首を振った。ジュードも感づいたか?ともかく疑惑は確信に変わったな。まだ皆は気付いていない。しかし今言うのはあまりよろしくない。闘技大会のほうに集中させるのなら余計なことを言わぬ方がいいだろう。特に彼女を気に掛けているレイアとエリーゼが知れば集中力が掛け注意散漫となり、そのせいで最悪死に至るかもしれない。大会が終わるまで様子を見よう。
「フィリンさんもどうかしましたか?」
「少しな。いや……大会が終わったらにしよう」
私が考え込んでいるとナチュラルに隣に立ち、こちらには視線を向けずに訊ねる。ローエンには言ってもよいかと思いはしたが、昨日のことを考えると彼にも他のことは考えないでもらった方がいいだろうと自己判断して首を振る。
「とにかく闘技場に急ごう」
鐘の音が大会開始の合図ならいつ始まってもおかしくはない。私たちは闘技場へと足を早めた。
「なんだなんだ。お前でも緊張するのか?」
顔が強ばってるぜ。と、面白そうに笑う、出来れば今はあまり見たくない彼が隣にいた。疑惑の種は一つじゃない。それを今暴露は出来ない。
「決まっておろう。どう仕返しをするか考えている」
いくつか案はあるのだがどれにするか悩んでるかだと、アルヴィンへと視線だけを向ける。
「状況によってパターンを変えるか?」
「頼むからこれからって時に危ねえこと考えんなよ。お前が言うとマジで怖えから」
目には目をと思いたいところだが、毒は嫌いだからな。考案中の譜術の実験台にするか?譜業でもいいな。ただ関係者や観客を巻き添えにしてはいかんな。
「無視すんなよ」
「無視はしていない。ただ返事をしないだけだ」
それを無視って言うんだよ。と頭をがしがしと掻く。まあ、この男の動きも把握しておかねばならんしな。やることも考えることも多くてなかなか面倒だな。私も損な性格をしているな、全く。