それを忌み嫌う
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「ジュード、聞いて!ユルゲンスさんってイスラさんの婚約者だったんだよ」
合流してすぐの会話がこれだ。人の恋愛にはさして興味はないから半ば聞き流していると、少々気になる内容が耳に入った。
「それとね、イスラさんってアルヴィン君のお母さんの先生なんだって。偶然がこんなに重なることもあるんだね」
「アルヴィンのお母さんが…?」
それを楽しそうに話すレイア。片やジュードはアルヴィンの母親が医者であるイスラに世話になっていると聞いてそちらに驚きを表す。だがアルヴィンは心配は無用だよ。と笑って返す。私的に気になるのは、アルヴィンを見るイスラの目。何かに怯えるような目。聞いたところで教えてくれるわけもないだろうが。
「さて、そろそろ始まるぞ。お遊びはここまでだ。準備ができたら受付をしてくれ」
もうすぐ本番。武力で他人と競うのはあまり興味がないが、今回はワイバーンを借りるためだ出し惜しみなくいこう。
「行くぞ」
「珍しく乗り気だな」
バシッとアルヴィンの背中を叩く。意味がない行為だが、まあ気合いの入れようと言うことで。
「続いて登場するのは、キタル族代表だ!」
受付を済ませたあと、順番を待っていた。そう待たずにアナウンスに呼ばれる。
「……緊張してきた」
「そんなんでは勝てるものも勝てんぞ」
舞台へと向かう途中、体を堅くするジュードの頭を軽く撫でてやる。突然撫でられたことに驚いたのか体を大きく震わせた。
「フィリン!?」
「敵なんぞアルヴィンだと思って殴ればいい」
「……おい。おまえ、俺を何だと思ってんだ?」
後ろを歩いているのをわかっていたから、左手の親指を後ろへと向ける。
「そ、そうだね」
「おい、優等生!おまえまで何納得してんだ!?」
「アルヴィン君、緊張感なさすぎだよ」
まだ緊張は解れないのか堅さの残る返事をする。標的にされたアルヴィンはジュードの返事に突っ込む、がレイアに諫められ何で俺が…と肩を落とす。
「とりあえず頑張れ」
「……おまえが言うな」
くくくっと笑うとアルヴィンは苦虫を噛み潰しような表情を浮かべる。これを見て緊張が解れたのか、ジュードだけではなくエリーゼやレイアまで笑い出した。結果的にいいだろ?と言えば、アルヴィンは黙って頭を掻いた。
「やったー!わたしたち勝ったんだね!」
「ふむ。やっと一息付けるか」
思ったよりは苦戦せず私たちは決勝へと勝ち残った。部族の大会でまさか魔物と戦うことになるとは思わなかったが、ワイバーンを使役する部族があるのだから他の魔物を使役していてもおかくしはない。敵の強さよりも連戦というのが疲れを呼んだが。
「なんとかって感じだったけどね」
「なっさけないなぁ、優等生は。楽勝だったろ」
ほっと息を吐くジュードにアルヴィンはケラケラと笑う。数回命中を外してずっこけた奴が何を言う、と突っ込んでやればさすがに黙ったが。
「いえいえ、なかなか厳しいものでしたよ」
「アルヴィン君はウソツキー!ね、エリー」
「うん…ウソツキ…です」
全員から総否定を食らったアルヴィンは顔をひきつらせるもがっくりと肩を落とす。今日だけで何度目か。まあ、見てる方は面白いからいいがな。
「ふふふっ。悪くはないだろう?」
「何がだよ」
私の言いたいことがわからないのは仕方ない。わざとそういう言い方をしたのだから。そのうち、わかるだろう……と思うが、どうだかな。
「決勝は、食事休憩をはさんでから始まるわ。他の参加者たちも一緒だから、落ち着かないかもしれないけど、食事にしましょう」
食事、か。確かに休み無く戦い続けたせいか少々空腹ではあるが、全員でというのが解せんな。しかしそれが大会側の意向ならば仕方ないのか。
「フィリン。どうかしたのか?」
「……いや、なんでもない……」
我ながらなんと歯切れの悪い。以前にもこんな風な不安が沸き起こって、現実となったことがあった。あれと似た不安が私自身を覆っている。私たち以外の者がいるところで誰かが何かを仕掛けるとも思えない。
「すまんな。思ったより疲れてるようだ」
「大丈夫?」
心配そうにジュードが私の顔をを覗き込む。少し休めば大丈夫だと、軽く手を振る。
「やけに素直だな」
「やせ我慢しても意味はあるまい」
個々人で戦っているわけではない。先を進むために戦わなくてはならんのだからな。辛いときは辛いと言わねば後々に面倒なことになる。そのようなミスなどするつもりはない。そこで格好付けるようなプライドは持ち合わせてもおらん。