降り立った地へと
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「フィリン!危ないよ!」
檻の中にいると高をくくったのか、ワイバーンをからかうティポはワイバーンに吠えられて驚きジュードに噛みつく。怯えながら噛みつくという心理は理解できんな。ワイバーンの気性の荒さに腰が引ける周りを余所に私が近づくと、レイアが注意してくる。
「これがワイバーンか……」
魔物の生態に関してはあまり詳しくはない。これから借りて乗ろうとするものだからか、少々興味が出てきた。
「君たち、何をしているんだ?そのワイバーンは我が部族のものだぞ」
私たちが来た道からの声。振り返れば男女が三人、こちらに近づいてくる。
「このワイバーンを手に入れたい。どうやって檻を破壊しようかと考えている」
「ふむ。壊すのはいいがどうやって操るのだ?」
「……二人とも論点がずれてるよ」
ミラと私の言葉にジュードががっくりと肩を落とす。
「あの…ワイバーンを貸してもらうことってできませんか?」
気を取り直してジュードが彼らに交渉を持ちかける。突然貸してほしいと言われて貸してくれるとは思えんが。向こうも不快感を露わにする。
「いきなり何を言い出すんだ、こいつ」
「こんなことしてる場合じゃない。早く代表者を見つけないと」
左右に立つ男女が中央に立つ男に訴える。が、彼の目は一転を捕らえていた。そちらへと私も視線を向ける。その先でミラがワイバーンを見つめていた。時間にして十秒足らず。その時間で何を悟ったのか、ワイバーンは頭を垂れるかのように地面へと平伏せる。
「見たかっ?獣隷術も使わずにワイバーンを服従させたぞ」
「この人達なら、ひょっとして……」
「え、まさかこの人達を?本気なの?!」
ワイバーンを服従させたミラに驚きを露わにする。そして真ん中の男の言葉に更に驚く。両側の二人が見つめる中、彼は頷いて私たちの前へとやってくる。
「私はキタル族のユルゲンス。街が賑わっているのには気付いたか?」
ユルゲンスと名乗った男がちらりと街の方を見て訊ねてくる。私たちはそれに無言で頷く。
「実は十年に一度、部族間で行われる闘技大会が明日開催される。だが我がキタル族は唯一の武闘派である族長が王に仕えているため参加が出来ないのだ」
表情を険しくするユルゲンス。そこまで言えば何となく言いたいことは察することは出来た。
「伝統ある我が部族が、このままでは戦わずしてまけてしまう。だが君には何か特別な力を感じる。どうだ、我々の一員として大会に参加してみないか?」
彼の提案に真っ先に手を挙げたのはレイア。あまりにも簡単に手を挙げたレイアにジュードは呆れた眼差しを向ける。
「参加すれば、この者たちを貸してもらえるのか?」
「そのつもりだ。ただし、優勝が条件だ。それに事前に君達の力を見せてもらう」
そんな簡単には貸してもらえる訳にはいくまい。だがすでにやる気でいっぱいのレイアは燃えてくる!と拳を握っていた。
「でも、部族の大会に僕達がでても大丈夫なんですか?」
「問題ない。優秀な戦士を連れて来ることは、無部族の地位を高める行為として過去にもあったことだ」
「ははっ、またずいぶんとテキトーだねえ」
部族の闘技大会に部外者の参加を許可されるのかと問えば、問題ないと返すユルゲンス。更にそれに返したのは『用事』があると席を外していたアルヴィンだった。全く、よくタイミングを見計らえるものだ。
「少し目離しただけで、面白そーなのに首突っ込んじゃって。俺はまぜてくれないのかぁ?」
「先ほど十分面白いことが遭ったばかりだよ」
手を振りながらこちらへとやってくるアルヴィンに少々皮肉めいたことを言ってやる。あやつがいなくなってすぐにあんな目に遭ったのだ。一言くらい言っても罰はあるまい。
「そうだそうだ!アルヴィン君、どこいってたんだよー。こっちは恐怖体験してたんだぞ」
「わりーわりー。けど、なんかあったと思ってすぐに駆けつけたわけだし、勘弁してくれよ、な?」
ティポが激怒するが、当のアルヴィンは軽い調子で謝罪する。その言葉で私は確信した。落石のことをわかっていて、私らから離れたということだ。
「一歩間違えていたら私らはペシャンコだったがな」
「マジかよ?」
わざとらしく驚くアルヴィンにああ、私も危うくな。肩に石が当たっただけで済んでよかったよ、とすでに完治している肩に触れれば、今度は驚愕の表情を浮かべる。どうやらあの程度で私らに被害がでるとは思っていなかったようだな。