降り立った地へと
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「あ、ありがとう……えっと」
「イスラよ。気にしないで」
粗方治療を終えた私たちの側に寄ってきた彼女はイスラと名乗った。
「レイア、まだ座ってた方がいいよ」
「うん…だいじょうぶ。ありがとね、ジュード」
イスラからレイアへと視線を移す。まだ些か顔色が悪い。ジュードもそれを見てか、彼女にまだ休むように言う。
「アルヴィン君めー!こんな時にかぎっていないんだよなー!アルヴィン君なら、レイアを助けられたのにぃー!」
エリーゼの隣で宙に浮かぶティポが怒りを露わにする。突然喋り出したティポにイスラは驚き、何度か瞬きをする。まあ、普通はぬいぐるみが宙に浮いて喋ることはないからな。
「年寄りだと思って失礼な!この、この!」
ちゃんと聞いていたのだな、ローエン。何度も何度もティポの体を引っ張る。エリーゼが慌てて止めようとするが、いかせんこの身長差だ。わたわたするしかない。レイアもジュードも笑みを浮かべている。そうか、レイアを元気づけるためか。全く、よく気が利くことだ。
「イスラさん、本当にありがとうございました」
改めて彼女に礼を述べれば、イスラは首を横に振りいいのよ。と言う。
「ところであなたたち、ここの人間じゃなさそうだけど、街に何しに?」
「よくここの人間じゃないとわかったな」
特に意味のない、何気ない言葉だったのかも知れない。だが何故か気になった。私の言葉にイスラだけでなく、ジュードやミラたちまで驚く。
「そ、それは……この街の人間なら、私のことを知っているし」
私は医者だから。という。確かに、それには違いないようだ。手際の良さからすれば間違いはないだろう。
「いや、すまんな。少々気になってな」
私の悪い癖だ、気にしないでくれと謝罪するが、イスラは私を警戒したようだ。これは、私の方も気を付けていた方がいいようだ。
「私たちはワイバーンを求めてきた。この街なら手に入るかと思ってな」
「ワイバーン…それなら、川の向こうに檻があって、おっきなのがいるわよ。行ってみてはどう?」
川の向こう側を指さす。そこにいると言うが、そんな簡単に教えていいものなのか?誰かが使役しているから街にいるのだろうに。
「本当ですか!ありがとうございます、イスラさん!」
「ふふ、お役に立てたようね。それじゃ、私はここで」
用は終わったと言わんばかりに彼女は去っていった。私以外は好意的な眼差しでイスラを見送る。そんな私に気付いたのかローエンがそっと近づいてくる。
「どうかしましたか?」
「……確信がないが……気を付けるに越したことはないかとな」
いや、ただの杞憂だろう、気にするな。と自分に言い聞かせるように首を横に振る。私がこれ以上、口を開く気はないと察したか彼もそれ以上は聞いてこなかった。
「フィリン。先ほどのはお前らしくなかったな」
やはり皆も思ったのか、それを代表してミラが訊ねてくる。チラリとジュードたちもこちらを見ていることからいって、気になっているのだろう。
「言い方が気になっただけだ。大した意味はない」
人間心理学も少しだけかじった事があって、ちょっとした言葉にも敏感になってしまう。我ながら全くの嘘ではないとはいえよくここまで言い訳が見つかるものだ。私が変わり者だとわかっているミラたちはそれで納得する。ただ、ローエンを除いて。
「ともかく、そのワイバーンとやらに会いに行こうか」
「そうだね。あ、フィリン。肩、大丈夫?」
痛むなら治癒術を掛けるけど?と心配するジュードに大丈夫だと返す。エリーゼが先ほど術を掛けてくれたおかげでもう痛みはない。大した怪我でなくて助かった。
「我慢はするな」
「キミに言われたくないな」
「……確かに」
珍しく、と言っては失礼だな。ミラも心配の言葉を掛けるが、私以上に現在進行形で医療ジンテクスの痛みに耐えているミラに言われたくはない。想像絶する痛みだろう。それはここにいる誰もがわかっている。時々、痛みで顔を歪める姿を目撃しているのだから。
「そ、そうだな」
「ふふふっ。何にしてもレイアよりも大したことないよ」
少し休んだとはいえ顔色が悪いのは変わらない。ワイバーンを見つけ、借りる算段が着いたら、今日は早めに休んだほうがいいだろう。この先はもっと過酷な旅になるのだろうから。しかし、何か引っかかるものがあって気持ち悪い。勘違い、思い過ごしであってほしいものだが、な。