降り立った地へと
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「ここがシャン・ドゥ」
「はい。ア・ジュールは古くから部族間の戦乱が絶えなかった、このような場所に街を作ったそうです」
皆、辺りを見回しながら口を開ける。天高くそびえる街に驚いているようだ。所々に立つ石像に広い川。普通の街では見れないような外観に誰もが感嘆の息を吐く。かく言う私も初めて来た時は感動したものだ。時間があれば色々調べてみたかった。
「ゆっくりと街を見るのは私も初めてだ」
「フィリンは来たことがあるの?」
私がこのリーゼ・マクシアに来たときに舞い降りたのがラコルム街道で初めて来た街はこのシャン・ドゥだと言えば、そうなのかと納得する。あれからまだ二ヶ月も経たないのだから私としても驚きだ。もう一年以上、この世界にいる気がする。
「人が生き生きしているな。祭りでもあるのか?」
活気づく街の様子にミラもテンションが上がってるようだ。
「見て、こっちもおもしろい像がある」
「偉大な先祖への崇拝と、精霊信仰が同一になったものだそうだ」
「フィリン。おまえ、知ってたのか?」
レイアが像を指さしはしゃぐ。その像の説明をしてやれば、何故かアルヴィンが驚く。
「前に来たときに宿の者に教えてもらった」
「……へぇ」
興味あるものは全て調べるのが学者の鉄則だと、付け加えるともう興味は失せたのか適当に返事をする。
「知ってたのかって、アルヴィンもこの街詳しいの?」
「前に仕事で、だよ」
あとはこいつを拾った時とかな。そう私を指さすので、人を指すなとその手を払う。
「あれ、ぼく、ここ知ってるよー。ねぇエリー?」
「うん…え、えと……ハ・ミルに連れてかれる時に来たんだと思います……」
改めて街を見回すエリーゼ。彼女がいつ、ハ・ミルへと連れていかれたのはわからぬが、つい最近というわけではないことは確かだな。まだ幼いとはいえ、完全には思い出せないようだし。しかし、エリーゼはハ・ミルに行く前はどこにいたというのだ。彼女はなんだというのか。本当に彼らは興味深い。
「え、ちょっとアルヴィン君。どこいくの?」
「ちょっと用事があってな。んじゃ、そゆことで」
話がいつの間にか進んでいて、アルヴィンが背中越しで片手を挙げながら去っていった。この街であやつが行くところといったら、彼処しかないだろう。まあ、黙っておいてやるか。あやつも私がわざわざ言うとは思ってないだろうしな。
「もー!協調性ないなぁ」
「どう…しよっか、ミラ」
「放っておいても、あいつは帰ってくる。とにかくワイバーンを見つけよう」
この街に来たのはワイバーンを借りるため。アルヴィンはこの街のことをよく知っているのだから、こちらがどこに行こうとも簡単に見つけるだろう。
「行くか……っ!?皆、避けろ!落石だ!」
ワイバーン探しに赴こうと足を動かすと、上から石が幾つか降ってきた。ほぼ条件反射的に見上げれば、私たちの真上から大きな岩が落ちてくる。動けずにいるレイアとエリーゼをローエンとミラが庇い、私とジュードは側にいた子供たちを抱えて飛び退く。
「くっ!」
避け損なったか、拳ほどの大きさの石が肩に当たり激痛が走る。が、手当より先に子供の安否を確認すれば怪我はないという。それに安堵し、向こうで倒れているレイアの側へと駆け寄る。
「レイアさん、しっかりしてください!」
すぐに意識を戻したレイアは起きあがる。血を流すレイアの手当をジュートが治療を行う。よく見ればローエンも怪我をしていた。
「大丈夫かい?」
「私は平気です。フィリンさんこそ、怪我をしているのでは?」
気付かれてしまったか。ローエンがそれを口にすればエリーゼが私の側に寄り、精霊術で治療をしてくれる。
「すまんな、エリーゼ」
「いえ、大したことなくて…よかったです」
しかし辺りを見回せば大怪我をした者はいないようだが、破片に当たった者は多いようだ。十数人がその場に座り込んでいた。
「医者よ。手伝うわ!」
まだざわつくこの場に現れた女性。医者だという彼女は、怪我人の側に寄り治療を始めた。
「フィリンさん?どうかしましたか?」
ジッと彼女を見つめる私にローエンが声を掛けてくる。何でもないと、首を横に振ったが、どうにも納得が出来なかった。現れるタイミングの良さに違和感と、ある人物の顔が過ぎった。あくまで予感だと、言い聞かせる。