旅は道連れ
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「このままシャン・ドゥを目指しましょう」
ローエンの言葉に一同は頷き歩き出す。残されたイバルは放置して。
「お前、案外強かだな」
「ふふ、何とかとハサミは使いようだ。あそこまで簡単だとつまらんがな」
たった一言誉めただけであんなに簡単に教えてくれるとはさすがの私も思わなかったがな。と肩を竦めれば周りから乾いた笑いが聞こえる。
「何にしても一縷の望みは出来た。急ぐぞ」
「でもイバルって人、ちょっと可哀想」
「大丈夫だろ?結構タフだし」
そんなに酷いことをしただろうかと首を傾げれば、結果良ければ全て良しですとローエンが言う。それに対してアルヴィンは、食えねえじいさんだ、と頭を掻く。
「あんまいじめんなよ」
「あの程度で挫けたら巫子など到底務まるまい」
仮にもマクスウェルのというならば、もっと威厳があってもいいだろうに。どうやら無駄にジュードに対してライバル心を燃やしているようだしな。役目をジュードに取られたかと思ったのだろうな。
「それに、苛める……というか悩ませてるのはお前だろう、アルヴィン」
「――っ!?」
横を歩くアルヴィンにだけに聞こえるよな声で言えば虚を突かれたように目を見開く。息を呑んだのもわかった。今言うのは危険かもしれんが、少しばかり牽制しておかねばならんだろう。
「何言って……」
「タイミングが良すぎるのだよ」
ジュードやエリーゼらは気づいておらぬがな、と付け加えて。私を怪しむなら怪しめばいい。異世界から来た私に対して何を怪しむのかは別だがな。
「別に私の邪魔をせぬならそれ以上は何も言わぬさ」
レンズ越しに彼の目を見る。私に見つめられるのが嫌なのか目を反らすがまたこちらへと視線を戻す。
「それとキミも私の興味の対象だということを忘れるなよ」
「……お前が忘れろよ」
くくくくっと口元に手を置き笑えばがっくりと両肩を落とすアルヴィン。
「二人ともどうかしたのー?」
「いや、素行の悪いアルヴィンは一度ワイバーンに食われて治らんかとな」
「アルヴィン君、食べらちゃうのー!?」
妙な間を空けて歩く私らにレイアが振り返る。まだ彼らに知らせる必要はない。そう判断し誤魔化すための言葉を口にすればティポがいやーっ!と叫ぶ。
「悪い子は食べられてしまうかもしれんな」
「そ、そんな……」
「大丈夫だよ、エリーゼ。そんなことないから」
フィリンもエリーゼとティポで遊ばないでね。と諫められてしまった。ちょっとしたジョークのつもりだったのだが、まだ幼いエリーゼには過ぎぬものだったか。ふむ、難しいな。
「フィリンさんの世界にワイバーンは?」
「その種の魔物はおるよ。やはり魔物使いではないと操れないがな」
確か神託(オラクル)の盾騎士団のその能力を持った者がいたな。会ったことは……あるようなないような?いかせん、記憶にない。
「こ、怖いんでしょうか?」
「操れる部族があるなら大人しくさせる方法があるのかもね」
そうでなければ操ることなどできぬな。神託の盾騎士団にいるその魔物使いは魔物の言葉を話せると言えば、ミラがイバルと同じだなと言う。そんなに優秀だったのか。人というものは本当に見かけではないのだな。
「何にしても行ってみればわかるだろう」
「怯えさせた張本人が何言ってやがんだ」
おや、何のことだ?ととぼければ、コイツ……と顔をひきつらせる。ああ、本当に彼らは飽きないな。興味は膨らむばかりだ。
「で、お前は俺の何を知ってるんだ?」
ワイバーンの話も落ち着き、先ほどのように歩き出すと目線だけをこちらに向けるアルヴィン。おやおや、まだ引きずっていたか。
「いや、ただキミが何か企んでいるのは出会った当初から知っておるよ」
言葉を上手く使い相手を自分のペースに持ち込む手口。ミラもローエンも見抜いてはいるようだが今は様子を見ているところだろう。相手の出方を見てからでも遅くはないとな。しかし、現在の状況では私がディラックとすでに幾つかの話をしているのは伏せておいた方がいいな。
「さてと、シャン・ドゥも久しいな」
「初めてあったところだからな」
そう。まだ月日と言うには短いあの日。もっと街に近いこの街道で彼と出会った。あの時はこのような状況になるとは思いもしなかったが。
(腐れ縁になりそうだな)
(……だな)