旅は道連れ
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「では、ラコルム街道を北に進むとシャン・ドゥという街があります。まずはそこを目指しましょう」
ようやく先へと進もうとした時、またアルヴィンが待ったと呼び止める。
「その街道ってラコルムの主ってやばい魔物が出没するんじゃなかったか?」
「おや、よくご存じで。ですがご安心を。ラコルムの主も霊勢を影響を受ける魔物。地場に入ったこの時期は活動を弱めていて、街道まで出てくることはないでしょう」
知っていてもおかしくはないだろう。彼はこれから私たちの目的地であるシャン・ドゥに住んでるのだから。それを口にしないのは隠しておきたいからか……ああ、彼女のことか。
「もし出たらアルヴィンを囮にすればいい。金の分は働いてくれるらしいしな」
「おい、お前。俺に対して厳しくね?」
くいっと親指を彼に向ければ不満な声を上げるアルヴィン。しかし皆もそれに納得すると、俺の存在ってと肩を落とす。
「気のせいだ」
さあ行こうかと海停の外へと歩き出す。後ろからアルヴィン君、ドンマイ!と慰めるレイアの声が聞こえた。
「アルヴィンの鳥だ」
シャン・ドゥに向けて歩いていると一羽の鳥が私たちの上空を飛ぶ。アルヴィンが腕を前へと出すと鳥はその腕に降りる。鳥の足につけられた手紙を外す。
「悪いな。すぐに終わるから、ちょっと休んでてくれよ」
そう言ってアルヴィンは少し離れた所へと移動する。ちょうどいいと私たちもこの場で小休憩を入れることにする。しかし、あの手紙はジュードの言うようなただの女宛ではないだろう。今のところ害をなすようなことはしていないから大目に見てもよかろう。目を配らせておくことに越したことはないだろうがな。
「ねえ、ミラ。前にイバルに預けてたものがあったでしょ?あれって、研究所から持ってきたもの?」
「ああ。あれは…クルスニクの槍を動かすための黒匣だ」
黒匣、か。ル・ロンドにいた時に少しばかりディラックから聞いていたが。そんなものを何故ナハティガルが作ったのだろうか。その件についてはディラックはけして口を開こうとはしなかった。
「そんなの、ミラが持ってなくてよかったの?」
「むしろ、あの黒匣を持ったままクルスニクの槍に近づく方が危険だ」
重要なものなら何故ミラ自らが持たぬのか。その理由はあの場にいなかった私にはわからない。
「ただし、困った問題もある。四大を捕らえた捕縛魔法陣。あれを展開したのは黒匣だろう。あいつらを救うには、同じ強度を持つ解放魔法陣を展開させなくてはならない」
「それって、四大精霊をを助けるためにはあの黒匣が必要ってこと?」
クルスニクの槍を破壊するには、四大の力が必要になるかもしれん。どのタイミングでイバルから鍵を受け取るかが問題という。がジュードはイバルが持ってることが問題だと返す。申し訳ないが私でも思うぞ。
「そう言うな。ああ見えてあいつもマクスウェルの巫子だ。多分大丈夫だろう」
「多分というのが一番怖いな」
「フィリン……まあ、わからなくもないけど」
彼は一生懸命すぎて何においても空回りしているような気がしてならん。悪い奴ではないのだろうが、絶対に一番タイミングが悪い時に事を起こすタイプだろうな。しかも取り返しのつかないような。
「ねぇ、黒匣は術を使うものなの?クルスニクの槍を動かすものじゃないの?」
ジュードの質問にミラは街路樹は人間が精霊術で灯している。その程度は誰でも簡単に出来る。だが、もっと強力な精霊術が必要になったらどうすると問い返す。
「僕達が精霊術を使うには、もって生まれた霊力野の素質に左右されるから…どれだけ霊力野からマナを出せるか決まっちゃうね。人を選ぶかな」
「そう。それがリーゼ・マクシアの理の一つ。だが黒匣の術は人を選ばない。クルスニクの槍のような巨大な物を動かすにも、黒匣あれば済んでしまう」
誰にでも使える巨大な力か。人は力を持てば変わる。街路樹もクルスニクの槍もいとも簡単に動かせると言うミラにジュードはすごく便利じゃない?と首を傾げる。
「便利だという事は人が簡単に力に溺れるという事だ。世界を壊すほどの力なら尚更だ」
「フィリンの言うとおりだ。誰でも四大を捕らえるほどの力を操り、その力で人殺しに利用できる。クルスニクの槍のように、な」
そこでミラの話は終わり、タイミングを見計らったかの様にアルヴィンも用を済ませ戻ってくる。そろそろ出発しようかとしたときに、彼はタイミング良く現れた。