旅は道連れ
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「あはは……待ちくたびれてつい寝ちゃったよ」
可愛いらしく笑いながら頭を掻くレイアに対してジュードは今にも血管が切れそうなくらい怒っていた。温厚な彼には珍しい。
「すぐに帰りなよ!」
「やだよ!わたしだって一緒に行くんだから」
レイアとしてはジュードが心配なのだろうが、危険なのは変わりない。彼女が棍術に長けていて戦力には十分になるとは思いはするが。
「遊びじゃないんだって!」
「知ってる!ね?………誰?」
説得、というにはただ喧嘩してるようにしか見えないが。レイアが隣にいるアルヴィンに同意を求めようとそちらを向いたが見覚えのない彼に訝しげな表情を浮かべる。
「アルヴィン君だよー」
「よろしく、嬢ちゃん」
本人が名乗る前にティポが紹介する。愛想良く挨拶するアルヴィンにレイアも笑顔を見せる。
「わたしレイア。こちらこそよろしくね、アルヴィン君!」
「君って……」
「くくくくっ」
何の悪気のないレイアにさすがのアルヴィンもまた顔をひきつらせた。それが面白くて思わず私は笑ってしまった。
「フィリン、笑うな!」
よほど嫌だったのか、ほんのり頬が赤い。これはからかいがいがありそうだな。何かあったときは「君」付けで呼んでやろう。
「いいでしょうミラ!わたしも一緒に」
「そうだな……理由を聞かせてくれ」
この旅の中心はミラ。そのミラに懇願すればミラはレイアに理由を問う。即却下と一刀両断すると思っていたのだろう、ジュードは驚いて彼女の名を呼んだ。
「鉱山で思ったの。わたしもミラみたいに強くなりたいって」
「それだけか?」
強くなりたいのならば、私たちについてこなくてもなれる。それは本人の努力次第なのだから。そう言われると予想していたらしいレイアはちょっと待ってね、とポケットに手を突っ込む。
「細かいことはそれに書いてきたから、見て」
「僕達と一緒に行く理由を?」
取り出したのは紙切れで、それをミラへと手渡す。何が書いてあるのかは私たちの位置からでは読めないがたくさん書かれていたのは間違いなかった。
「うん、100個くらいある」
「ふふ、わかった。私は人間らしくて気に入ったよ」
どんな事が書かれていたのかわからないがミラは笑いながら頷いた。じゃあ!と歓喜の笑みを浮かべるレイアにミラはもう一度頷いた。
「さって、お許しも出たところで、みんな、よろしくね!」
「もう…」
「よいではないか。賑やかで」
それが不安なんだよ、とがっくりと肩を落とすジュード。しかしミラから許可が下りたせいか諦めたようだ。そんな私たちを知ってか知らずか、船は無事に海停へと到着した。
「なあ、ここってニ・アケリアの近くじゃねえの?寄ってかなくていいのか?」
海停へと降り立ち出口へと歩き始めると最後尾のアルヴィンが口を開く。後ろを歩く彼には気付かれぬよう私は目を細める。
「今、村に用はない。何か行きたい理由でもあるのか?」
「いーや。みんなおたくを心配して、帰りを待ってるかと思ってさ」
たぶん……たぶんだが、ミラもアルヴィンがそう言い出した理由を知っているだろう。確証はないが。あの会話を聞く限りは彼に会わなければならないからだ。しかし、あの名前はなんの組織の名前なのだ。ここではそれを知ることは無理のようだ。
「村を気にかけてくれるのはありがたいが、今は急ぎたい」
この男がそのようなことを気にする風でもあるまい。ディラックとの約束もある、なるべく注意をしておかねばならぬな。自分から言い出しておいてなんだが、私がここまで気に掛けねばならんのは何故だ?
「フィリン、どうかしたの?」
「いや、なんでもない」
思わず長考してしまったようだ。私自身も注意せねばならんな。こちらが気付いていることを気付かれるわけにもいかない。
「珍しいな。お前がぼーっとしてるの」
「私は常に考え事をしてるよ、アルヴィン君」
言動に気をつけなければ勘の良いこの男のことだからすぐにバレてしまう。そんな簡単にバラすような間抜けではないがな。念のためというのが半分、からかいたいというのがもう半分。わざと君付けで呼んでやれば彼はぎょっとする。
「フィリン!」
「くっくっくっ。キミも面白いな」
だからこそからかいがあると笑えば、笑えねえよ。と項垂れた。人で遊んだり探ったりするからだと口内で呟いく。