旅は道連れ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ローエン、何故ア・ジュールに向かうのか、理由を教えてもらえるか?」
ラ・シュガルの首都であるイル・ファンに向かうというのに何故他国であるア・ジュールに行く船に乗ったのか、その疑問に対する回答は得ていなかった。
「はい。端的に言うと、今のガンダラ要塞を突破するのは不可能だと思われるからです」
「ゴーレムか?」
イル・ファンへ向かうにはガンダラ要塞を抜けなくてはならない。そのガンダラ要塞を抜けるのは不可能だと言った。その理由が何かというのならば私には思い当たる節が一つしかなかった。
「フィリンさんの仰るとおりです。私たちが脱出を試みた時、ゴーレムの起動を確認しました」
「ゴーレム?」
「ち、ち、地の精霊をつかった人間の兵器……なんですよ」
ミラには聞き覚えがなかったのか、眉を顰め聞き返す。それの説明をしたのがエリーゼ。
「そうです。アレと戦うには、師団規模の戦力と戦術が必要になります」
「けど海路も無理なのに、ア・ジュールへってことは」
「ア・ジュール側の陸路を経由して、イル・ファンへ向かうと言うことか?」
多少遠回りでも確実にたどり着く方法で向かうと言うことか。よくあの短時間で思いついたものだ。
「ほう、そりゃまた。でもよ、ファイザバード沼野はどうすんのよ?」
感心したように頷いたアルヴィンだったがもう一つの心配を口にする。これに関してはア・ジュールで育ったミラとエリーゼにはよくわからないみたいで首を傾げる。
「イル・ファンの北にある広大な沼地でね。ガンダラ要塞と対をなす、ラ・シュガル最大の自然要害っていわれてるんだ」
ジュードの丁寧な説明に二人は、へーと頷く。
「あそこ、霊勢がめちゃくちゃで通り抜けられないって話じゃなかったっけ」
「いえ、変節風が吹きましたので、現在は地霊小節に入りました。つまり……霊勢が火場から地場になったこの時期であれば、ファイザバード沼野も落ち着いてられるはずです」
なるほど。ガンダラ要塞を抜けられないけど、今が唯一ガンダラ要塞以外で突破できる機会というわけか。さすがはローエンと言ったところか。ただ者ではないと思っていたがここまでとは。彼は、ローエンのその能力を見抜いていたという事か。いや、指揮者、だとわかっていたからか。
「全然わかりません…」
「安心しろ。私もさっぱりだ」
「要はファイザバード沼野を抜けてイル・ファンに向かうには今が絶好の機会だと言うわけだ」
かなり丁寧な説明だと思ったが、霊勢の理自体を理解していなければ説明自体理解できない。今はその説明をゆっくりしてはいられないだろうが。
「とりあえず問題なさそうってことでいいんじゃねーの?」
「はい。いいってことです。時間もあまり残されていないようなので」
難しい話はしたくないのかひらひらと手を振って話を終わらそうとするアルヴィン。が、頷いたローエンの表情は厳しいものだった。それにティポが、何がー?なんでー?と問う。
「みなさんがカラハ・シャールを去った後もガンダラ要塞のゴーレムは起動したままとの情報を得ました。これは、ラ・シュガルが開戦準備を始めた証と捕らえていいでしょう」
「開戦って、ア・ジュールと!?」
戦争、か。何処の世界にも必ずと言っていいほどあるものなのだな。怖いと言って怯えるエリーゼの頭をそっと撫でてやる。連れてきたのはいいが思ったより状況は悪いのかもしれんな。
「う、うわぁぁぁ!」
開戦間近と聞いて空気が重くなった中、私らの後方にいた船員が大声を上げる。寧ろ悲鳴と言った方が正しいのかもしれんが。何事かとジュードとアルヴィンがその船員の側へと近寄り、目の前の樽をのぞき込む。その瞬間、ジュードが固まったのがわかった。
「……優等生、何これ?」
「はは…僕の幼なじみ…」
顔をひきつらせながら問うアルヴィンにジュードも顔をひきつらせる。
「いないと思っていたらこんな所にいたのか。それでは見つからんはずだな」
「フィリン……そう言うことじゃないと思うけど……」
街の中ではなく船の積み荷である樽の中にいたのでは見つからないはずだ。にしても気持ちよさそうに寝ているな。
「樽の中は寝心地がいいのか?」
「そう言う意味でもないと思うぜ」
寝顔を見てる限りは心地よさそうなんだが、まあ、こんな所で寝てるのはどうかとは思いはするが。
「……とりあえず……起こそうか……」
はぁ、と溜息を吐いてジュードがレイアの体を揺らす。なかなか起きないレイアにムッとしたらしいジュードはパンッとレイアの頭を叩いた。まあ、それで起きたんだがな。