新たな旅立ちと
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「ジュード!」
そしてこの空気を読んでか読まずにか、今度はディラックが駆け寄ってくる。
「父さん…ごめん。僕、ミラと行きたいんだ」
「ダメだ!行かせるわけにはいかない。彼女は…お前が関わろうとしてるのは…」
「おいおい、俺たちどんな縁なんだよ」
ジュードはディラックから背を向ける。息子に危険なことをしてほしくないと止めようとするディラックの言葉を遮るように割り込む声。私は小さく息を吐きそちらへと顔を向ける。
「アルヴィン!?」
「新しい仕事、クビになっちまってね。その様子じゃ、また行くんだろ?俺、前にもらった分の働きしてないぜ」
俺も行くと言う風な態度にジュードが嬉しそうに笑顔を見せる。この男の本心を知らぬから見せれる笑みだろう。
「知り合い…なのか?」
「うん。前にずっと一緒だったんだ」
目を見開いて驚くディラック。当のジュードは喧嘩していたことも忘れて嬉々とする。
「じゃジュード君、またよろしくな」
「うん!」
この男に良心というものがあるのだろうか?まあ、私が言えた義理でもないだろうが。
「それじゃあ、母さん、父さん。行ってきます」
「…ジュード、忘れるな。大人になると言うことは、自らの行動で責任を取ることだぞ」
止めても無駄だと諦めたのか、ジュードに今言えるだろう一言を伝える。これまでの旅のことをふまえてか、しっかりと頷く。
「……君も行くのだったな」
「安心しろ。出来る限り彼のことは見ておく」
この際の彼とは二人のことだが、言わずともわかってるだろう。夫人がいる前で下手なことは言わぬ方がよいだろうしな。
「……すまない」
「礼を言われるような事じゃない。ではな」
あまり二人で話し込んでいれば怪しまれるだろう。皆が先に乗った船へと私も乗り込む。すると彼の一人、アルヴィンが船に乗り込んですぐの所で腕を組んで待ちかまえていた。
「何話てたんだ?まさか、息子さんを下さいとか?」
「キミの頭の中はめでたいな」
様子を伺っていたくせにと言ってやりたいところだがそこはあえて口にしない。こやつの思い通りになるのも癪だしな。
「ここにいる間、少々世話になったからな」
医者だけあって博識だ。面白い話を色々聞けたぞ、キミも知りたいか?と厭らしく笑えば、結構だと首を振る。
「してもキミも随分タイミングがいいな」
「だから縁があるんじゃね?」
昨日の夜、私が治療院にいたことにはやはり気付いていないのか。気付かれては隠れた意味がないのだが。
「ミラ様、歩けるようになったんだな」
「ああ。大変だったが、面白かったぞ」
鉱石を取りに行っていた経緯については話してもなんの問題はないだろう。彼女の足に取り付けてあるのは医療器具なのだからアルヴィンが知ったところで彼の目的には関係ないはずだ。
「で、何か用があるから待ってたのだろう?」
世間話から何か情報を得ようとしているのだろう。あまり防御姿勢でいると私の場合ボロが出そうだ。慣れないことはしない方がよいだろうしな。
「ただ待ってたやっただけだろう」
「私には誤魔化しは効かんぞ?」
キミも知っている筈だろ?頭一つ分以上背の高い彼を見上げる。口角を上げて笑みを浮かべれば、彼はたじろんだ。私の方が誤魔化すと思っていたのか。だとしたら愚かな判断だ。
「……何が言いたいんだよ」
「別にキミが何をしようと私は構わない。まあ、私の邪魔をすればそれなりの制裁は加えるがな」
少し声音を低くするアルヴィン。だがそれで屈する私でもない。
「邪魔なんかしてないだろ」
「今後だよ。私とて目的がある」
その為にミラたちと旅することを選んだ。この男にはこの男の目的があるのは知っている。とは言えそれが私の邪魔になるのかは今の段階ではわからない。ただ、ミラやジュードの弊害になるのは目に見えているが。
「目的って?」
「キミには理解できぬよ。どうしても知りたいなのなら一晩掛けて説明するが」
やはり聞き出そうとするか。徹夜で聞く元気があるなら教えてやると言えば本気で嫌な顔をして首を振る。この男は人から話を聞き出そうとするわりにはこちらが全力で説明しようとすると断るのだからやることが矛盾している。
「まあ、せいぜい頑張るといい」
「……なんだよ、それ」
コツンと彼の胸元に軽く握った拳で叩いて皆が先に向かっている船室へと向かう。
((やれやれ、気が抜けないな))
((……バレてんのか?))