父と子
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「今、何か聞こえなかった?」
車いすを押すジュードがふっと足を止め辺りを見回す。ジュードの言うように何か鳴っているのだが、辺りを見回してもその原因と思われるものはない。
「あ!あったよジュード!精霊の化石、向こう側に!」
レイアの指さす方に青い光を発した石があった。確かにただの石ではないそれを目指して私たちは急いで移動する。
「あれ……?さっきはあったよね?」
「移動したということか」
先ほど石が見えた場所にきたが、そこには何もなかった。あれだけ光が輝いたものならばすぐにわかるのに。見当たらないのならばいなくなったと、は思いたくないが。
「でも、石が勝手に動くなんて……」
「ありえないことでも、他に可能性がないなら真実になり得る」
ジュードが口にしたのは確か『ハオの卵理論』だったか。現に、石は見当たらない。何らかの手段を得て移動したという可能性は捨てきれない。
「ありえないと言うことはありえない、と言うことか」
先を進もうとするとジュードで制す。
「ここからは本当に僕一人で……」
「ジュードとフィリンはミラをお願いね」
ジュードが私を制している間に一人また先に行ってしまうレイア。何か焦っているような感じを否めないのを感じたのは私だけではなく、ミラも訝しげな表情でそれを見ていた。レイアを追って更に奥へと進めば、開けた場所へと辿り着いた。
「不思議な場所……すごく綺麗」
光り輝く石が辺りを照らす。オールドラントでもこんな場所はそうはないだろう。
「下がれレイア!」
何かをいち早く察したミラが叫ぶ。その瞬間、レイアの足下が盛り上がり何かが吹き上がる。瞬時的に反応できなかったレイアは後ろへと吹き飛ぶ尻餅を付く。すぐさまジュードがレイアの側に寄り、構えて警戒する。
「な、何この魔物っ!?」
「ジュード、やつの頭だ」
蛇のように胴の長い魔物の頭に輝くのは、先ほど見た青い石。どうやら移動したと思っていた石はあの魔物の頭に付いていたものと言うことか。誘き出された、と思ったほうがよいな。
「ふむ。興味深い魔物だ」
「フィリン!冷静に分析しないでよ!」
状況が状況だからか、顎に手を当てて感心する私にジュードが突っ込む。突っ込む余裕があるように見えるのは私だけか。
「わたしが……取るからね、ジュード」
棍を握りしめ、自分に言い聞かせるかのように呟き魔物を睨みつけるレイア。
「あの魔物、精霊の化石を取り込んで自分のエネルギーにしてるんだ!」
「解説してる場合じゃないでしょ!」
間合いを取りつつ攻撃を加える。が、相手は予想以上に手強い。それを見てか、ジュードが魔物の分析をする。
「まずはアレをどうにかせねばな」
「うん!」
精霊の化石を手に入れるためには魔物を倒すなりして戦闘不能にしなければならない。
「私に任せて!」
レイアが棍を構えて飛び出す。一人で突っ込むのはあまり得策ではない。まずはフォローをと譜陣を展開させる。
「荒れ狂流れよ!――スプラッシュ!」
私が譜術で攻撃をしている間にジュードとレイアが共鳴をして魔物へと攻撃を加える。二人に前衛を任せて私は後方支援に徹した方がよいようだな。
「レイア!」
「うん!」
「「六散華!!」」
二人の共鳴術技が魔物へとヒットする。私が譜術で足を止め、ジュードとレイアがその隙をついて術技を使って攻撃を続ければ魔物は地面へと倒れ込んだ。
「やった、今のうちに精霊の化石を!」
「待って、僕が」
地に伏した魔物へと駆け寄るジュードとレイア。魔物の頭に付いた精霊の化石を手に取ったときに油断が生まれた。それを狙っていたかのように魔物は起き上がり、ジュードとレイアを吹き飛ばす。
「ジュード!レイア!」
私にしては浅はかな行動だっただろう。咄嗟に飛び出し大きくした鎚で魔物を殴る。が、魔物は尾で私の腹へと殴りつける。声にならない悲鳴を上げてその場へとうずくまる。
これはマズいと痛む腹を押さえながら、魔物を睨みつければ、いつの間にかミラが目の前に立っていた。足が動かないはずのミラが立っている。よく見ればミラの足の医療ジンテクスにはさきほどの精霊の化石が取り付けられていて、彼女の額には汗が浮かんでいた。それほどの痛みに耐えて立っている。
「フィリン、大丈夫か?」
「……キミよりはな」
互いに痩せ我慢をしたものだ。バッグからグミを取り出し、口へと頬張る。豪快に噛み砕き飲み込めば腹の痛みは幾分か治まる。ジュードとレイアも立ち上がりそれぞれ構える。