騒がしい出港
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「船があるか見てくるね。ちょっと待ってて」
少々、予想外な事があったもののなんとか海停に辿り着く。その予想外なことのおかげでドロッセルから借りた馬を逃がすことになってしまい、足の動かぬミラをジュードが背負いここまでやって来た。ジュードが背負う以上私が戦闘を行うのは必然だったのだが、二人から些か不満を持たされたのは放っておこう。背負っていたミラをベンチへと降ろしたジュードは船の有無を確認しに走り去っていった。
「フィリン」
船員に話しかけるジュードの背に視線を向けていれば後ろから名を呼ばれ、なんだ?と返事をして半身だけ振り返る。
「なぜ私についてこようと思った?」
何を今更と思ったがミラには話していなかったな。ジュードには今朝、話をしたがその時はミラはまだ寝ていたな。
「キミについて行くのが私の目的に一番近いと思ったのだよ」
「お前の目的?」
私の言葉に訝しげな表情を浮かべるミラ。何か善からぬ事でも考えていると思ったか。まあそう思うのは致し方あるまい。そんな彼女にふふっと笑えば今度は睨まれる。
「目的と言っても明確なものはまだ無くてな。ただ、キミの行く先に何かありそうだ、と思っただけだ」
そう睨むでない。と肩を竦めたが彼女は睨むことを止めない。狙われている彼女は疑うのも使命の内なのだろう。興味を持てばその智を得たくなる私と似ている気がした。そうと決めたら疑わず己の道は己が決める。面白いな。私のような者が他にもいたとは。これは喜ばずにはいらなんな。
「わからなぬならばわかるまで旅を続ければいい。それだけだ」
それでは納得出来ぬか?と問えば、彼女はいいやと首を横に振った。互いに顔を見合わせクスクスと笑っていると背後から、ミラ様!と声がした。誰だと思って振り返れば私やジュードと差ほど年の変わらぬ少年が立っていた。変わった装束だなと眺めていたが、どうやら彼は私のことは眼中にはないようだ。まあ、いいがな。
「ようやく追いつけました」
「イバル?どうしてここに?」
褐色の肌に銀髪の少年はイバルというのか。ミラの知り合いのようだが。にしてはミラが怪訝な表情を浮かべている。彼に何か問題でもあるのか?うふ、面白い。
「手配書にミラ様を見つけ、心配で馳せ参じました」
満面の笑みを浮かべるイバルと呆れたように眉を顰めるミラ。ニ・アケリアを守る使命はどうした?とミラが問えば、イバルはミラの力になるならと快く見送ってくれたと清々しいほどに堂々とそう言った彼は面白いな。
「ん?……何だ、貴様!?」
二人のやり取りを見ていつの間にか笑みを浮かべていたのか、先ほどまで私など眼中にはなかった彼が今度は睨みつけている。ようやく私の存在に気付いたのか。
「自己紹介は当然まだだな。私はファリンシア・アラングラ。フィリンでよい」
「貴様の名前などどうでもいい!なぜミラ様と一緒にいる!?」
よくわからぬが彼は私が気に入らないようだ。まあ成り行きだ、と言えばそんな理由でだと!ふざけるな!!と怒鳴られた。何を言っても彼からは怒声しか返ってこない。そんな私と彼のやり取りに呆れたのか、ミラはベンチに手を突いて立ち上がろうとした。が、その足は踏ん張ることが出来ず倒れ込む。
「ミラ様?どうされたのですか?」
彼はずっとミラの顔だけを見ていたようだ。地面へと倒れたミラの足に痛々しそうに包帯が巻かれていることに今気づいたようで目を見開く。
「…こ、これは」
そしてイバルがミラの状態を察すると同時に船を見に行っていたジュードが戻ってきた。何というタイミングと言うべきか。だが、未だに私は眼中にないというのに、ジュードは即目に入るのだな。
「いいか。元来、ミラ様のお世話役として、わが身を顧みず務める従者を巫子と呼ぶ。それは誇り高く、尊ばれる」
さっきまでの馬鹿っぷりはどこに行ったのか、真面目に何かを説くイバル。しかしその目はジュードをしっかりと睨みつけている。
「ミラ様お言葉とはいえ、それをどこの誰とも知れない輩に任せた俺が間違いだった!さぁ、ミラ様、行きましょう」
ミラが自分の判断が招いた結果だと言っても怒り心頭のイバルには関係ないようだ。彼がどういう人物かはよく知らない。わかるのはミラに仕えている者ということとジュードを敵視していること。さてどうしたものか。