ざわつく心
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「なんだココー、変なトコー!」
「ここは複数の霊勢がぶつかる境界帯。ラ・シュガル有数の『変なトコー』ですよ」
意外とノリがいいなローエン。しかしこの世界の力が未だよくわからない私には変と言われてもあまり理解が出来ない。理論的なことは書物で知識を得たが、基本音素(フォニム)が力の源である私にはそれを体感できない。何となくおかしいというのはわかるが……イル・ファンの夜域くらいわかりやすければよいのだが。
「頂上はこの上か……」
結構登ったと思ったがまだ上があったか。ミラを先頭に蔦を登っていく。どちらかと言えばインテリな私にはツラいな。ふむ、少々面倒と思ってしまった。クレイン、すまんな。
「コアが作動してる。けどこの高さ……」
頂上へと登り切ればそこは異様だとわかった。頂上にある穴からなんらかの力が噴き出しているようだった。少々地響きもしている。これだけの高さをどう降りるのか。
「時間がありません。吹き上がる精霊力に対して魔法陣を展開します。それに乗ってバランスを取れば、無事に降下できるかもしれません」
ローエンの提案にみなが黙る。その意味を改めて理解しているのだろう。
「つまり、飛び降りるのか?」
「ってことは、コアを狙うチャンスは一度だな」
「的確に狙わねばならんな」
一発で決めなければならない。失敗は許されない。でなければクレインも住民も助けられない。こんな選択に迫られたのは初めてだな。しかし……やらねばならぬ。
「……行こう。みんなを助けなきゃ」
全員を見回すジュード。エリーゼがただ一人不安を滲ませていた。まだ幼い彼女には難しい選択なのかも知れない。ここで待っていますか?と優しく問うローエンの手を、エリーゼは首を横にって握った。何にせよ、ここで一人待たせる方が危ないだろう。
「手を離さないで下さいね……では、参りますよ!」
穴に向けて魔法陣を展開するローエン。それに私達は飛び乗る。上へと吹き上げる精霊力のせいか魔法陣は不安定で揺れる。バランスを取るので精一杯になる。だがコアを見つけそれを狙わねばならない。チャンスは一度きり。
「見えた!アルヴィン」
「だが、こうも揺れちゃ……」
降下しながらもコアを捜し当ててたジュードがそれを指差す。アルヴィンもジュードの指す方向に銃を構えるが、この不安定な魔法陣の上では標準が定まらず撃つことが出来ない。それを見てジュードが自分の肩を台座代わりにし、彼の手を乗せる。今度こそ標準を定め、コアを狙えば、球はコアに当たり装置が止まる。
「止まったぞ!」
装置が止まったことにより、捕らえられていたクレインや住民たちが解放される。私達も魔法陣から飛び降り、私とローエンはすぐさまクレインへと駆け寄る。
「クレイン……」
「ご無事で何よりです。クレイン様」
ローエンの手を借りて起きあがるクレイン。マナを吸い取られたせいなのか顔色は悪い。それでも私達を安心させるためか小さく微笑む。
「すまない、フィリン、ローエン。忠告も聞かず突っ走り、こんな結果に……」
「キミの気持ちもわからんでもないよ」
クレインにとってそれが大事なのならば、仕方がないのだろう。誰にだって譲れぬものはある。
「無事でよかったよ」
安堵の息を吐けば、もう一度すまないと返した。
「ナハティガルはここに来ているのか?」
「僕も、あの男を問いつめる気で来たのですが、親衛隊に捕らえられてしまって……」
見ていないと首を振るクレインにミラは小さく息を吐いて、そうかとだけ言った。あのままイル・ファンへと帰ったか。住民を召集すればクレインは助けに来ると踏んだのか……そうすれば自分に刃向かう者を始末できるから。あの手の者ならやりかねないな。
「もーこんなところやだ、早く外に出よーよー!」
怖いのか今にも泣きそうな顔のティポ。確かにいつまでにここにいる意味はない。クレインや住民らを早く休ませてやらねばならぬしな。みなもそう思ったのか、脱出しようと出口へと向かったときだった。
「危ない!下がれ!」
コアを覆っていたものが光り出す。すぐにクレインを下がらせ、全員身構える。繭状のものからなんて表現していいのかわからないモノが現れた。ただ大きな力を持っているということだけはわかる。向こうは好戦的な様子にクレインな住民らを被害の及ばない所まで避難させる。そして私らはソレに対峙する。