物語に似た感覚
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「お待ちしておりましたわ、皆さん」
南西地区にあるシャール邸前。そこにドロッセルとローエンが立っていた。ジュードたちの姿を見ると笑顔で手を振る。アルヴィンの背に隠れている私にはまだ気づいていないようだ。ローエンはわからぬが。
「あれは、ラ・シュガル兵!」
ドロッセルたちの背後のシャール邸をポカンとした表情で見るジュードとエリーゼ。だが屋敷の入り口から出てきた兵士たちに思わず声を上げ、身構えるミラ。これから邪魔する予定の屋敷から兵士が出てくれば罠かも知れないとは思うだろう。だがこんな所で諍いを起こすわけには行かない。それを察したアルヴィンがミラを止める。
「今のは……」
兵士たちの後に出てきた大柄な男と細身の男。大柄な男の方はどこか異様なオーラのようなものを発している。まるで、一度だけ会ったことのある神託の盾(オラクル)騎士団の主席総長のようだ。
「ドロッセル、お帰り。お友達かい?」
馬車に乗って去っていった男らに目を向けているといつの間にかクレインがドロッセルの側に立っていた。
「お兄様!紹介します!……あ、まだみんなの名前を聞いてなかった」
ドロッセルの天然は健在のようだ。たかが一日二日で治るものではないが。その様子をクレインはクスリと笑う。
「ははは、妹がお世話になったようですね。僕はドロッセルの兄、クレイン・K・シャールです」
「クレイン様はカラハ・シャールを治める領主様です」
クレインの自己紹介とローエンの補足に驚くジュードとエリーゼ。二人は一日何回驚くのだろうか。見ていて面白いが。
「ところで、何故隠れているんだい……フィリン」
アルヴィン……越しの私を見て問い掛けるクレイン。あの様子だとローエンもわかっていたのか。
「驚かせるつもりだったが、逆になってしまったな」
「えっ!?フィリン……クレインさんを知ってるの?」
驚きを露わにしたのはクレインとローエン以外の全員。ドロッセルは私が彼らと一緒にいたことに驚いているのだろうが。
「この街の滞在中に世話になっていた」
「思ったより早い帰りだったね」
今生の別れではないが、すぐに戻るつもりはないと言った様子で街を出たのに、まさかと思うだろう。余程嬉しかったのかドロッセルには抱きつかれた。
「ここでは何です。中へお入り下さい」
クレインの案内で屋敷へと入る。中の作りも豪華なせいか、やはりジュードとエリーゼが大きな口をあげて見渡していた。
「なるほど、また無駄遣いするところを皆さんが助けてくれたんだね?」
「無駄遣いなんて!協力して買い物したのよね」
やれやれと苦笑いを浮かべるクレインと頬を膨らませるドロッセル。いつみても微笑ましいものだな。
「んで、何でお前は領主様と知り合いなんだよ?」
「あと、さっきのも……」
街に着いたら説明すると言ったことを思い出したのだろう。クレインたち以外の表情は厳しいものだった。
「少々長くなるがいいだろう――まずは、私はリーゼ・マクシアの人間ではない」
ただそれだけで空気が変わった。この事を知っているアルヴィンやクレインたちは表情は厳しいものの驚きはない。一番表情を変えたのはミラで、どういうこと!?何で!?と声を荒げたのはジュード。答えていると話が進まないので、それには無視して話を続ける。理由もわからずオールドラントからリーゼ・マクシアに来てしまったこと。
それを助けてくれたのはアルヴィンで、この世界のことを教えてくれたのもアルヴィン。イル・ファンまで限定で旅をしていた。別れた後にクレインたちとは出会った。
「カラハ・シャールに向かう途中で方向を見誤ってな。行き倒れになってるところを助けられた」
あれは死ぬ寸前だったな。笑っていったら誰も笑わなかった。ふむ、この手の冗談はダメか。
「この街への滞在中、僕や妹の相手をして欲しいと頼んだんです」
色々と私としては願ったり叶ったりの話だったしな。衣食住が保証されていてたくさんの本を読むこともできたし。
「あとはさっきの戦闘のことなんだけど……」
「私も気になっていた」
これが一番面倒な説明だな。座っていては出来ぬと、私は立ち上がり少し離れたところに立つ。そして鎚を空間から取り出しその説明をする。あまりよく理解できないようなので自在に出したり消したり出来ると説明した。術に関しても、譜術は精霊の代わりにオールドラントで音素(フォニム)と呼ばれるものを使う。私の術に精霊を感じないだろう?と問えば、厳しい表情のままミラは頷いた。