物語に似た感覚
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「もうでっかいおじさん来ないかなー?」
カラハ・シャールへと入る。まだ心配なのか、エリーゼとティポが街の外を何度も振り返る。この雰囲気の中までは追ってこれまい、という言葉を信じておずおずとだが街の中へと入っていく。ジュードとミラは入り口に立つ兵士たちを気にするように視線を向ける。それをアルヴィンが目を合わすなと注意するが、兵士が動くだけで緊張を強める。
「やあ」
「フィリンじゃないか」
兵士に感づかれたくないだろう。そう思って見張りの一人に声を掛ける。それなりに街にいたからある程度の兵士とは顔見知りだ。それはクレインとドロッセルのおかげなのだが。
「旅に出たんじゃ?」
「忘れ物をしてな。クレインは屋敷にいるかい」
少し会話してジュードたちから気を反らせればいいだろう。私が引きつけてるのを察したアルヴィンが市場の方へとジュードたちを連れて行く。適当な露店へと移動したのを確認し適当な世間話を続ける。
「今日は来客があるからご在宅な筈だ」
「そうか。仕事中すまんな」
兵士は私との会話を終えた後、また入り口へと戻っていく。彼らと合流しようと露店へと向かうと見覚えのある姿が見えた。ジュードたちと会話をしてるのか。暫くして彼女、ドロッセルはカップを店員へと手渡した。まだ無駄遣いかな。包装されたカップをローエンが受けとり、ジュードたちに頭を下げて二人は去っていった。
「どうかしたのかい?」
「そっちこそ。それより助かったぜ」
「兵士さんと何話してたの?」
ただの世間話さ。と言ったら何故か信用されなかった。私が世間話をするようには見えないという事か。
「あとであの人の家にお邪魔することになったんだ」
「この街にいる間は利用させてもらう方がいろいろ好都合だろ」
今この街も巡回の兵士を増やし守りを厳重にしている。イル・ファンから最も近い街だから、というのもあるが。
「ふむ、街の様子をうかがってからお茶にするとしよう」
ミラの意見に反対する者はいなく、寧ろ街の中を徘徊したくてたまらない様子だ。
「フィリンはどうするの?」
「急ぐ旅ではない。もう少し、付き合わせてもらうよ」
街の中を知ってる者が一緒の方がキミたちも都合がよいだろ?と問えばそうだねと返す。まあ、さっきみたいに兵士に会う度に警戒されても困るしな。
「忘れ物はいいのか?」
「私が忘れたとわかってるだろうから構わぬよ」
無くなると困るが、無くさないとわかっているから慌てる必要がない。私のその言葉の意味がわからないらしく全員が首を傾げた。
「エリーゼ。あの店のクッキーは美味いぞ」
「ほ、本当ですか!?」
「クッキー食べたーい!」
街の中を案内しながら歩けば見えてきた店の一つを指さす。よくドロッセルが買っていたのを思い出して隣のエリーゼに教えれば今にも涎を垂らしそうなくらい目をキラキラさせて声を上げる。ティポまでも大きな声を上げて踊り出す。
「何がいい?」
「いいんですか!?」
余程食べたいのか、すぐさま反応する。表情がクルクル変わって面白い。好きなのを選べと言うと、エリーゼは悩みながらいくつかのクッキーを選ぶ。ジュードたちにも問おうとしたら、ぐぅーっと大きな音。何事だと思えばそれはミラのお腹の音で。
「……何がよいのだ?」
「全部だ!」
まさかの回答にさすがの私も言葉を失った。それをジュードとアルヴィンが申し訳なさそうに手を合わせた。ミラは大食漢なのだと。二人前なんてペロリと平らげると聞いて仕方ないと、店員にとりあえず全種類を適当にくれと注文する。それに驚いたジュードが止めようとしたが、よいと断る。
「あら、フィリンじゃない。だったらオマケするわ」
「助かる」
私に気付いた店員に少々オマケしてもらいクッキーを受け取る。私一人で持つには大きいなと、思い持ち直そうとしたら急に軽くなった。
「持つよ。前見えないだろ」
「ふふふ、すまぬな」
前が見えぬほどの大きさの袋に入ったクッキーを持ってくれたのはアルヴィン。存分にその体格を生かせと笑えば、全部叩き割るぞと返してきた。だから、割ればミラに殺されるぞと更に返してやればアルヴィンは黙った。
「そろそろドロッセルの所に行こうか」
ある程度、街の中を歩き回り、お茶の約束をしているというドロッセルの屋敷へと向かうことになった。私の顔を見てどう反応するのか楽しみなのと驚かせたいという悪戯心も募りアルヴィンの背に隠れて彼らについて行く。