59話 生き行くが価値
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「うるさい!うるさい!うるさいっ!」
全てを否定するように首を横に振る。激怒するのは図星だからか。
「シンクの十倍近く生きてる私だってまだまだ世界を知らないんだから、甘ったれるんじゃない!」
「……真咲ってオールドラントに来てまだ一年くらいだよね?」
ぼそりと突っ込むアニスは後でお仕置きすることにしよう。そもそも私が言いたいのはそう意味じゃないんだけど。
「要は経験が足りないと言うことですよ。ヴァンに拾われてから彼の言いなりに動いてきたのですから生きていく上での経験が足りてない」
「そう言うことです」
ジェイドに言いたいことを言われてしまったけど良しとしよう。一番の年長者で様々な経験を積んできているのだから。
「と言うわけで。シンクは私たちがヴァンを止めるまで待っててね?」
「はぁ?」
にっこり笑って言えばシンクの表情が崩れる。さっきまでのシリアスが台無しだけど、いいとしよう。
「優しき風よ、我が声を聞き、我が命に答えよ」
言葉を紡ぐと同時に現れる魔法陣。それを杖で突いていく。
「彼の者をその風を用いて動きを封じよ」
私の周りから現れた緑色の風はシンクへと向かう。この風はシンクに巻き付く。
「は、離せ!」
「離したら意味がないでしょ?」
体を押さえつけるように巻き付かれたせいで身動きが出来ない。出来るか不安だったけど成功してよかった。
「念のため、ティア。お願いしてもいい?」
ティアへと振り返ると彼女は意味が分からないという風に首を傾げる。けどすぐに察したのか、コクンと頷いて杖を構える。
「深淵へと誘う旋律――ナイトメア」
ティアの歌声が響く。すでに体力的にも限界だったであろうシンクは抵抗する間もなく眠りへと落ちる。そして私は安堵の息を吐いた。