59話 生き行くが価値
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「……倒したのか?」
ピクリとも動かないシンク。まさか、と思っているとシンクは小さく体を震わせ、ゆっくりと上半身を起こした。満身創痍……もう動くことなど出来ないはずなのに。彼の目はまだ諦めていなかった。
「ま、まだだよ……」
どう見てももう動けない筈。シンクにまだ何か奥の手があるのか。私の知る限りではそれはないはず。
「シンク。もうやめよう」
杖を手にしたままシンクへと近付く。後ろから制止する声が掛かるけど、少し距離を開けたところまで側に寄る。
「……ローレライを……消す……」
そんなにも預言を自分の生を憎んでいるのか。今まさに、その命の灯火が消えかかっているというのに。このままでは死ぬまでシンクは戦うことを止めない。
「ちゃんと生きてないくせに、星の記憶だの何だの言わないでよ」
「真咲?」
よく考えてみると腹が立つ。お説教できる立場かと言われると自信を持ってあるとは言えないけど、腹が立ってきた。
「たかが数年しか生きてない。教団の外でごく普通の生活もしてきたこともない。代用品にもならないとか言い訳して」
私もネガティブで自分なんかって思うことは多々ある。寧ろ常に思ってる。そんな私でも優しくしてくれる人や好きになってくれた人もいる。辛いことは多いけど楽しいこともたくさんある。
「手に入れた命なんだから楽しもんだ勝ちでしょ?自分の意志で生きようとしたことないくせに世界を壊す権利なんてない!」
自らの意志で好きなように考えて行動をしたことがないなら生きてるとは言わない。自分の足が動くなら思うがままに好きな所へ行けばいい。
「それとも、シンクは誰かに促してもらわないと生けていけないの?」
馬鹿にしたような言い方をして、膝をついたままのシンクを見下ろす。ギリっと奥歯を噛みしめたのが見える。