59話 生き行くが価値
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「けどそれだけだ。けして星の記憶にはあらがえない。いずれみんな死ぬんだ。それが星の記憶だ」
誰も何も言わない。黙ってシンクの言葉を聞いていた。
「でもヴァンのやり方なら最終的にローレライもろとも第七音素は消滅する。真の意味で預言は消えるのさ」
いくら預言はもう詠まないと言っても、星の記憶がある限り何の意味がない。結局、星の記憶の通りに事が起きると。
「おまえはそんなに預言を恨んでいるのか……」
「ボクは導師イオンが死ぬという預言で誕生した……一度は廃棄されたことも知ってるだろう」
「だから……預言を恨んでいる?捨てられたから?」
シンクの預言の否定の仕方は他の面々とは少々違う。ルークとガイの言葉にシンクは小さく首を横に振る。
「違うよ。生まれたからさ!おまえみたいに代用品ですらない。ただ肉塊として生まれただけだ。ばかばかしい。預言なんてものがなければ、ボクはこんな愚かしい生を受けずに済んだ」
みんな預言で大事な物を失った。でもシンクは違う。預言によって生を受けたことを憎み恨んでいる。預言どころか自分の生も否定している。
「……生まれてきて何も得るものがなかっていうの?」
「ないよ。ボクは空っぽさ。だが構わない。誰だってよかったんだ。預言を……第七音素を消し去ってくれるならな!」
シンクは哀れだ。その生がじゃない。まだ二年三年しか生きていないけど、この世界で楽しいって嬉しいって思えることが何もなかった。誰も与えなかった。費えなかった命は利用された。生に縋るものならそれでもいいと思うだろうけど、シンクはそうじゃなかった。
「劣化しているとはいえ導師と同じ第七音素の力。アンタたちもただでは済まない!試してみようよ。アンタたちと空っぽのボク、世界がどっちを生かそうとしてるのかさぁっ!」
武器を抜きシンクの元へと駆け寄ると、シンクはバク転をして距離を取る。そして身構える。シンクとの最後の戦いが始まった。