56話 前夜に語る思いの果て
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「どうぞ」
ノックをし部屋の中の主の許可を得て、失礼しますと入る。中央付近に置かれたテーブルの側で本を読むジェイド。テーブルの上にはボトルが一本と中身であろう赤い液体の入ったグラスが置かれていた。
「部屋に戻ってたんですね」
「ええ。こちらの方があなたも話しやすいのではと思いまして」
気を使ってくれたんだ。騒がしい酒場なら私たち程度の会話なんて聞こえないだろうに。
「それに、私だってたまにはあなたと二人きりになりたいんですよ」
微笑みながら言われるともう何も言えない。そりゃあ私だってとは思う。みんなが一緒の時に隣を歩くのはいつものことだし。宿に入ると殆どアニスたちと一緒のことが多い。こうしてのんびり……と言っていいのか……二人きりで話すのはどれくらい振りか。ただ内容は和やかなものではないだろうけど。
「立ち話もなんです。どうぞ」
わたわざ立ち上がって椅子を引いてくれる。そう言うところは紳士なんだよなぁと思うんだけど、口にすると後々面倒だからやめよう。
「早速ですがどうでした?」
口調は至って平穏なもの。まだ何も言ってないのだからそうなんだけど、反対されるかもと思うと緊張が走る。
「まずはこれを」
私の目的を話す前に一冊の本を彼に手渡す。本というかノートに近いだろう。ルーチェが直筆で書いた物なのだから。
「……これは、惑星譜術ですか。他にもありますね」
「はい。明日の戦いに役に立つと思いまして」
私の知ってるのでは手に入れ方は別の方法なんですがね、と。ルーチェも譜術士でもあるから残しておいたのかもしれない。
「これは大きな収穫ですね。それで?」
これが本当の収穫ではないでしょ?と問われてしまえば答えないわけにはいかない。まあ、その話をしに来たんだけど。